令和7年3月定例会 市長提案説明
本日(3月4日)、令和7年第1回岐阜市議会定例会が開会され、新年度(令和7年度)の予算案を中心に諸議案の御審議をお願いするにあたり、市政に臨む所信の一端と施策の大要を申し上げます。
はじめに
私が市民の皆様の信任を賜り、岐阜市長に就任してから早や7年が経過し、本市の発展と共に歩む2期目の集大成の年を迎えています。
この間、市政運営の基本方針として、“オール岐阜のまちづくり”を掲げ、「選ばれるまち岐阜市」を実現するため、「岐阜を動かす」という強い信念の下、市民の皆様の幸せに貢献する様々な施策に全力で取り組んでまいりました。
とりわけ、あらゆる社会課題の解決の突破口となる、“こどもファースト”を掲げ、本市教育の根幹となる教育大綱の具現化をはじめ、草潤中学校の開校、柳ケ瀬グラッスル35の子育て支援施設「ツナグテ」の整備、親子のふれあいを深める絵本の読み聞かせと、児童館・児童センターの幼児室のリノベーションなど、教育や子育てに焦点を当て、子どもたちの健やかな成長を支える環境づくりに力を注いでまいりました。
さらに、本市のみならず、岐阜都市圏全体の発展を促す核となるセンターゾーンでは、市街地再開発やリノベーションまちづくり等を進め、官民連携による地域活性化に取り組んでまいりました。
こうした取り組みの成果として、直近5年間における本市への転入超過は2,146人となり、年代別では、子育て世代が5年連続で転入超過となりました。
また、直近の将来推計人口では、本市の2040年の人口は、前回の2018年推計よりも約1.4万人増加し、人口減少のスピードが緩やかになっていることが示されています。
これは、未来を見据えた「岐阜を動かす」様々な施策が実を結び、まちの魅力が向上したことにより、社会動態の改善に一定の成果をもたらしているものと考えております。
いよいよ、この春には、多くの皆様が待ち望んでいた東海環状自動車道の市内区間が開通し、新たな北の玄関口として岐阜インターチェンジが黒野地域に誕生します。
さらに、岐阜公園におけるPark-PFIによる飲食物販施設「岐阜城楽市」のオープンや、義務教育学校「藍川北学園」の開校、「鷺山公民館・子ども館」の合築による開館など、岐阜を動かすために一つひとつ積み上げてきた施策が具現化してまいります。
これまで市民の皆様との対話を大切にしながら、本市が抱える様々な課題に真摯に向き合い、1期目の4年間でまいた種が、今まさに目に見える形で、実を結び始めていると感じております。
新年度(令和7年度)も、市民の皆様と共に岐阜市の未来を築いていく中で、さらに岐阜が動いたと実感していただけるよう、政策のベクトルを中心とした施策を推進し、「選ばれるまち岐阜市」の実現に向けて邁進してまいります。
本市を取り巻く環境
それでは、最初に本市を取り巻く環境について申し上げます。
我が国の景気動向は、賃金・所得の増加による個人消費の回復や、コロナ禍後のインバウンド需要の拡大により、緩やかな回復基調にあるものの、世界に目を向けますと、各地での紛争の長期化やアメリカの輸入関税引き上げなど、日本経済にも影響を与えるリスクが多く存在しております。
こうした中、国は、昨年(令和6年)12月、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を確実なものとするため、総合経済対策及び関連補正予算を成立させました。
この経済対策では、「日本経済・地方経済の成長」、「物価高の克服」、「国民の安心・安全の確保」を3本柱に掲げ、賃上げ環境の整備や低所得者への支援と合わせて、能登半島地震を含む自然災害からの復旧・復興などに取り組むこととしております。
さらに、現在国会で審議中である令和7年度予算案については、先の経済対策・補正予算と合わせて、成長型経済へ移行するための各種施策が盛り込まれるとともに、与野党間の協議に基づき、所得税が発生する年収、いわゆる「103万円の壁」に関する税制改正関連法案の修正などが提案されております。
この税制改正に関しては、令和8年度に向け、引き続き協議が行われる予定とされておりますが、基礎控除等の引き上げが地方の基幹税である住民税に関わるものであることを踏まえ、地方財源の減収、各種制度への影響、地方の事務負担などを十分に考慮した上で、慎重かつ丁寧な議論を重ねていただきたいと考えております。
我々基礎自治体としましても、これら国の動向や社会経済情勢を的確に把握し、迅速かつ適切に対応していく事が求められております。
予算編成におけるキーワード
こうした状況の下、新年度(令和7年度)当初予算の編成にあたっては、基本方針の柱として2つのキーワードを掲げて取り組んだところであります。
1つ目は、「EBPM」(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング、証拠に基づく政策立案)であります。
高齢化の進展に伴う社会保障関係経費の増加や、人件費及び物価の高騰、金利の上昇による公債費の増加など、今後も本市財政を取り巻く環境は、厳しい状況が続くものと予想されます。
こうした中、本市の将来を見据えた「未来への投資」を着実に推進するためには、EBPMをさらに浸透させた予算編成を行うことが肝要であります。
そこで、行政が保有する様々なデータを可視化するBIツールの活用などにより、分析や効果測定に基づく事業の見直しをはじめ、新規事業を立案する際の課題と解決策の明確化を図るとともに、限られた財源をより効率的、効果的に活用するワイズスペンディングを徹底してまいりたいと考えております。
2つ目は「働きがい改革」であります。
少子化による人口減少や民間企業の賃上げなどにより、地方自治体の採用環境が厳しさを増す中、職員こそが市政や市民サービスを支える力であり、志の高い優秀な人材の確保と育成が必要です。
こうした中、本市におきましても、専門性の高い人材の確保・育成に努めておりますが、限られた人的資源で全ての社会課題を解決することには一定の限界があります。
そのため、本年度(令和6年度)に引き続きオープンイノベーションを掲げ、広域連携や官民連携など、様々な手法により、それぞれのアイデアや技術、ノウハウ、資金を積極的に取り込み、施策・事業に活用してまいります。
また、多様化する行政需要に的確に対応し、より質の高い市民サービスを提供するため、業務のDX化や業務手順の見直しにより、効果的、効率的な仕事の仕組み化にも取り組んでまいります。
政策のベクトル及び主要事業
新年度(令和7年度)は、これら2つの考え方を柱に、特に重点を置いて取り組む政策の方向性として、「こどもファースト」、「経済活性化」、「岐阜を動かす社会基盤整備」、「持続可能で幸せな市民生活」という4つのベクトルを掲げ、これまで積み上げてきた施策を着実に深化、浸透させることにより、市民の皆様の幸せに貢献してまいります。
こどもファースト
それでは、政策のベクトル及びそれぞれの主要事業につきまして順次申し上げます。
まず1つ目は、市政運営における不変の方針と位置付けております「こどもファースト」であります。
本市の未来を担う子どもたちが直面する様々な課題を解決していくことが、いわゆる8050問題や地域の担い手不足などの多岐にわたる社会課題解決の突破口になると考えております。
そのため、子どもたちが自らの選択と行動によって希望あふれる未来を拓く力を育む教育大綱の具現化を図るとともに、安心して子どもを産み育てることができる社会の実現に向け、切れ目のない子育て支援に、引き続き取り組んでまいります。
まず、教育についてであります。
いじめ対策については、令和元年のいじめ重大事態を教訓とし、いじめ対策監や主任いじめ対策監の配置など、いじめ対策の総合的な取り組みを実施することにより、一定の成果が表れております。
一方、不登校対策の取り組みについては、草潤中学校の分教室ともいうべき「校内フリースペース」を、昨年度(令和5年度)から本年度(令和6年度)にかけて中学校10校に設置しました。
この校内フリースペースは、長期欠席の未然防止だけでなく、長期欠席者が学びにつながり続けることができる大切な居場所としても有効であることから、新年度(令和7年度)には草潤中を除く、未設置の全中学校及び義務教育学校に拡充してまいります。
さらに、本年度(令和6年度)からメタバース空間を活用したオンラインフリースペースを週2回実施しており、長期欠席の子どもたちの学びの場を充実させてまいりました。
新年度(令和7年度)は、オンラインフリースペースと多様な学びを行う草潤サポートを統合し、個別アセスメントの充実を図るなど、さらなる不登校児童生徒への支援を行ってまいります。
全国の不登校児童生徒数は、依然、増加傾向にありますが、こうした取り組みにより、本市における不登校児童生徒数は、横ばい傾向にあります。
新年度(令和7年度)も引き続き、子どもたちの小さな変化・心のSOSを見逃さないため、子どもの健康サポートアプリ「ここタン」を活用するなど、教職員と児童生徒間での情報共有及び子どもたちが相談しやすい仕組みづくりを進めてまいります。
また、未来の学校の先駆けとなる施設一体型の義務教育学校「藍川北学園」がいよいよ来月(4月)開校します。
1年生から9年生までの一貫した教育活動が始まり、独自教科の「わかあゆ学」に取り組むとともに、中学2年生に相当する8年生では、社会課題・地域課題をビジネスや行政を通じて解決するための起業家精神を養う、アントレプレナーシップ教育を実施してまいります。
さらに、来年(令和8年)4月に開校を予定する「藍東学園」については、改修する芥見東小学校校舎の特性を活かし、活発な異年齢交流の更なる充実や教科センター方式の導入により、低学年から専門的な学びに没頭できる場を提供するなど、開校に向けて施設改修を進めてまいります。
また、引き続き地域の一員としての意識や自己の未来を拓く力を培う、「ぎふMIRAI's(ミライ)」推進事業を展開するとともに、新年度(令和7年度)は、幼児期から「探究心」を育むため、市立幼稚園において、園児が身近な「人・もの・こと」に出会い、自ら調べ、地域の人から話を聞き、その結果を友達や家族と共有する、幼児教育推進プロジェクトに取り組んでまいります。
次に、子育て支援については、安心して出産・育児に臨めるよう、妊婦支援給付、産婦健康診査の拡充を図るとともに、引き続き保健センターにおいて、家庭訪問や乳幼児健康診査を通じた妊産婦等への伴走型支援を推進してまいります。
また、これまで中学生までを対象としていた「子ども医療費助成」を、新年度(令和7年度)から、18歳到達後最初の3月まで、すなわち高校生年代までに拡大し、保護者の子育てにかかる経済的負担を軽減してまいります。
さらに、働く子育て世帯に対する支援として、放課後児童クラブにおける保護者のニーズに応えるため、一部のクラブにおいて民間委託を導入し、8教室、240人の定員の拡大を図るとともに、民営化した保育園等の園舎建替を支援するほか、公立保育所におけるトイレの洋式化など、保育環境の向上に努めてまいります。
また、就労要件に関係なく全ての子育て家庭が時間単位で柔軟に利用でき、令和8年度から全国で本格実施される予定の「こども誰でも通園制度」について、新年度(令和7年度)は、京町保育所で試行的に実施してまいります。
一方、高等教育につきましては、令和11年度の供用開始に向け、薬科大学の新キャンパス整備を着実に進めるとともに、本年(令和7年)4月に設立する岐阜市公立大学法人への移行のメリットを活かし、産業界との連携による教育研究の質の向上と薬学スペシャリストの育成を進めてまいります。
また、女子短期大学の男女共学・4年制への移行に向けた計画の具体化を進め、より一層社会ニーズに即した人材育成の取り組みを目指してまいります。
経済活性化
2つ目は、「経済活性化」であります。
人口減少社会において、持続可能で選ばれるまちであるためには、地域経済の活性化が不可欠であり、その基盤となる地域企業の成長と発展を支援することが極めて重要であります。
このため、企業立地やスタートアップ支援など、新産業の創出や生産性向上を図る取り組みを推進するとともに、ワークダイバーシティの理念に基づき、誰もが働くことを通じて居場所と出番を得られる労働環境の整備を包括的に進めてまいります。
また、コロナ禍からの社会経済活動の回復に加え、円安の効果が加わり、訪日外国人旅行客が増加している中、インバウンド需要の取り込みなど、戦略的な観光振興を積極的に推進してまいります。
まず、企業立地については、「ものづくり産業等集積地」において、企業自らが用地の取得・造成を行う、いわゆる民間主導の手法を用いた立地を進めております。
これまでに三輪地域では、1社と立地に向けた基本協定を締結し、農業6次産業化に向けた取り組みを始めたほか、柳津地域では、3社と立地協定を締結し、既に造成工事を開始する企業もあるなど、いよいよ企業立地が具現化してまいりました。
新年度(令和7年度)は、三輪地域において、引き続き企業と地権者との相互調整を行いながら、集積地周辺のインフラ整備を進めるとともに、柳津地域では、立地を希望する企業のニーズに迅速に対応するため、立地のサポートや周辺道路等の整備を行い、企業集積に向けた動きを加速させてまいります。
次に、スタートアップ支援に関しましては、引き続き起業を志すプレイヤーの増加を図るほか、新たに革新的なアイデアで短期的に成長する有望なスタートアップへの支援を強化し、成長を促進するための多面的な取り組みを展開してまいります。
また、労働生産性の向上を図るため、市内の中小企業などのDX推進に取り組むとともに、物価上昇や円安の影響を受けている企業の資金調達ニーズに対し適切に対応してまいります。
一方、柳ケ瀬を含む中心市街地においては、商業施設の閉店やアーケードの老朽化など、様々な地域課題を官民連携により解決し、エリアの価値を高めることが求められております。
そのため、商店街関係者や地域の皆様の自発的な活動を生み・支えるエリアプラットフォームを構築するとともに、引き続きまちの担い手の育成・創出に取り組むリノベーションまちづくりを進めてまいります。
ワークダイバーシティの推進に関しましては、公益財団法人日本財団のモデル事業を活用した就労支援をはじめ、テレワークを活用したショートタイムワークなど、個々の状況に応じた多様で柔軟な働き方の創出に努めてまいります。
また、障がい者等の超短時間雇用の創出については、地域の企業が理解を深め、協力が広がることで新たな雇用機会が増えつつあり、その結果として企業への採用人数が過去3年間で延べ48人に達しております。
今後も、就労体験企業の拡大などに取り組み、働きづらさを感じている方のニーズに適した多様な働き方を提供してまいります。
さらに、国が新たに創設する「就労選択支援サービス」を通じて、働く意欲のある障がい者の能力や適性を評価し、適切な就労支援を提供することで、一般就労へつなげてまいります。
次に、観光につきましては、国内外からの観光客をより一層取り込むため、引き続き、地域DMO候補法人である公益財団法人岐阜観光コンベンション協会と連携し、マーケティングに基づく戦略策定と事業推進を、官民一体で進めてまいります。
特に、インバウンドへの対応については、中国の旅行会社と連携し、SNS等を活用して情報発信を強化するなど、過去最多となる訪日外国人旅行客を積極的に取り込む施策を進めるとともに、大阪・関西万博において、「ぎふ長良川の鵜飼」の魅力をPRし、さらなる誘客を図ってまいります。
また、伝統文化である「ぎふ長良川の鵜飼」を次世代へ継承していくため、さる2月1日、鵜飼漁と海女漁を有する5市により「伝統的漁撈(ぎょろう)文化ユネスコ登録推進協議会」を設立いたしました。
今後、本協議会の活動を通じて、ユネスコ無形文化遺産登録に向けた取り組みを推進していくとともに、この活動が構成市である、輪島市において、能登半島地震からの復興の一助となることを願っております。
一方、本市のシンボルであり、市民の誇りと宝である岐阜城においては、天守閣を後世に引き継ぐため、万博やねんりんピック終了後、速やかに、耐震性の向上や設備の更新などを行うための改修工事に着手してまいります。
これらの観光振興施策をさらに強化・拡充し、官民一体で鵜飼や岐阜城を基軸とした「本物志向の観光まちづくり」に継続的に取り組むための新たな財源として、令和8年4月からの宿泊税の導入に向けた準備を進めてまいります。
岐阜を動かす社会基盤整備
3つ目は、「岐阜を動かす社会基盤整備」であります。
本市が将来にわたり選ばれるまちであり続けるためには、引き続き中心市街地の活性化や多様な地域課題の解決に取り組むとともに、官民連携によるまちづくりを推進することが重要です。
そのため、積年の課題であった名鉄名古屋本線鉄道高架化事業や、岐阜駅北エリアの市街地再開発事業を着実に進めるとともに、旧長崎屋跡地における柳ケ瀬広場の整備や道路空間の利活用など、多様なニーズに応えられる新たな公共空間の創出に向け、各種施策を展開してまいります。
新年度(令和7年度)は、名鉄名古屋本線鉄道高架化事業について、県との連携の下、用地取得等を進め、事業を着実に進展させてまいります。
また、岐阜駅北中央東地区、中央西地区の市街地再開発事業については、先般、両再開発組合が発表された建築プランとスケジュールの見直しを踏まえ、新年度(令和7年度)は、中央東地区の除却工事及び中央西地区の建物補償に対し支援するほか、駅周辺の利便性や回遊性を向上させるため、再開発とあわせて整備する歩行者用デッキの設計を進めてまいります。
次に、地域のまちづくりに貢献する社会基盤整備については、三輪地域の岐阜ファミリーパークにおいて、引き続き総合スポーツ公園化に向けた再整備に取り組んでまいります。
また、常磐地域の岐阜市畜産センター公園では、豊かな自然環境を活かした魅力ある公園づくりを行うため、本年度(令和6年度)中に再整備基本計画を策定し、新年度(令和7年度)から公園再編に伴う園内道路の整備に着手してまいります。
さらに、来月(4月)6日に岐阜インターチェンジの開通が予定される黒野地域においては、薬科大学新キャンパスの整備を進め、ライフサイエンス拠点形成を促進するとともに、引き続き、周辺市町との交流人口の拡大等につながる広域道路の整備を進めてまいります。
また、本年(令和7年)1月28日に、埼玉県八潮市で発生した下水道管の破損に伴う道路陥没事故を受け、安全性確保の観点から、目視などによる下水道管の緊急点検を既に実施しておりますが、新年度(令和7年度)、さらにテレビカメラによる詳細調査を実施してまいります。
次に、公共空間の新たな活用については、岐阜公園において、引き続き本格的な歴史公園として再整備を進めるとともに、Park-PFIにより、来月(4月)26日にオープンする予定の飲食物販施設「岐阜城楽市」の運用開始を契機に、官民連携によるさらなるにぎわいの創出を図るとともに、歴史博物館において、総合展示室のリニューアルに着手し、岐阜公園エリア全体の活性化につなげてまいります。
また、センターゾーンにおける多様なまちづくり活動の拠点となる、柳ケ瀬広場の工事に着手するとともに、「居心地が良く、歩きたくなるまちなか」の創出を目指すため、長良橋通りでのトランジットモール交通社会実験を実施するほか、柳ケ瀬周辺エリアにおいて、回遊性と連続性を高める道路空間の利活用を検討してまいります。
さらに、公共交通への自動運転技術の導入については、令和5年度より中心市街地における自動運転バスの5年間の継続運行を開始し、これまで大変多くの反響や期待の声をいただいており、今年(令和7年)の1月1日には、乗車人数5万人を突破いたしました。
引き続き、技術の検証と社会受容性の向上を図りながら、新年度(令和7年度)は、運行ルートの一部区間において、レベル4自動運転の実現に向けて取り組んでまいります。
持続可能で幸せな市民生活
4つ目は、「持続可能で幸せな市民生活」であります。
超高齢社会の進展や核家族世帯の増加により、家族や地域間の絆が薄れ、様々な生活課題に直面する人々が増加しています。
こうした中、皆様の支援ニーズを適切に把握し、問題解決に向けた包括的な支援に努めるとともに、健康寿命の延伸や生涯学習等を通じた生きがいづくりなどにより、誰もが安心して幸せに生活できる社会の実現を目指してまいります。
さらに、人口減少・少子高齢化の進展や価値観の多様化などにより、地域コミュニティを支える担い手の確保が喫緊の課題となるとともに、地球温暖化の進行に伴う気候変動の影響により、記録的な猛暑や豪雨災害が頻発するなど、我々の社会は、持続可能性が脅かされる状況に直面しております。
このため、将来にわたり、誰もが地域で安心して暮らせるよう、防災への備えをはじめ、様々な地域コミュニティ活動を支援するとともに、脱炭素化や防犯など幅広い施策を展開してまいります。
まず、複雑で多様な課題を抱える人々への重層的な支援については、引き続き福祉まるごと支援員を中心に、様々な支援機関が連携し、きめ細かな対応を行ってまいります。
また、地域の多様な課題を身近なところで受け止め、解決を図ることができるよう、その相談役となる「CSW(コミュニティソーシャルワーカー)」を新たに配置し、地域福祉のネットワーク化を進めるため、新年度(令和7年度)は、モデル事業を一つの日常生活圏域で実施し、全域への展開に向け、効果や課題を検証してまいります。
さらに、いわゆる8050問題などにつながる、ひきこもりへの対応については、新たに総合的な支援を実施する「ひきこもり地域支援センター」を設置し、メタバースを活用したオンライン居場所づくり事業や、家族向け学習・相談会を実施するなど、多様な施策と情報発信により支援を強化してまいります。
また、生産年齢人口の減少とともに、高齢者人口がピークを迎える2040年問題を見据え、高齢者が社会的に孤立することのないよう、ひとり暮らし高齢者の見守りを充実させるとともに、外国人材の活用を推し進めるなど、介護職員の確保・育成に努めてまいります。
さらに、本年(令和7年)10月18日から21日までの4日間にわたり、高齢者を中心としたスポーツや文化の総合的な祭典である「ねんりんピック岐阜2025」が県内全域で開催され、岐阜市内では、テニスや弓道を含む6種目を開催します。
市ホームページやSNSを活用して本市の魅力を効果的に発信し、にぎわいの創出につなげてまいります。
健康寿命の延伸については、「柳ケ瀬健康運動施設ウゴクテ」において、運動のきっかけを提供するとともに、新たに記録手帳を導入し、クアオルト健康ウオーキングとウゴクテの相互利用の促進を図り、幅広い世代の健康づくりに取り組んでまいります。
あわせて、後期高齢者及び国民健康保険の保健事業と、介護保険の地域支援事業の一体的な実施について、新年度(令和7年度)は、すこやか健診などの期間を延長し、受診率の向上を図るとともに、慢性腎臓病対策やICTを利用したフレイル予防事業を行ってまいります。
また、生涯学習に関しましては、あらゆる世代が個人の学びの充実、他者との交流、地域貢献などを通じて自身の生きがいを見つけることができる、「生涯活躍社会」の実現に向け、「長良川大学」の見直しを進めてまいります。
さらに、今年(令和7年)は岐阜空襲から80年の節目の年となることから、平和の尊さや空襲の惨禍を後世に語り継ぐ「平和の鐘事業」などを拡大して実施してまいります。
文化芸術に関しましては、昨年(令和6年)の「清流の国ぎふ」文化祭2024で見られた機運の高まりを未来に継承するため、新たに全国大会などへ出場する市民を支援するほか、文化センターでは、金公園と一体の公共空間として、居心地が良く文化芸術を感じるリニューアルに向け整備を進めてまいります。
さらに、大阪・関西万博において、友好都市である中国の杭州市と市内の児童合唱団などがステージイベントを行い、万博をきっかけとした交流を深めてまいります。
一方、地域コミュニティ活動の支援に関しましては、地域の連携・合意形成による課題解決を図るまちづくり協議会をはじめ、様々な地域活動に対する助成を継続するとともに、持続可能な地域コミュニティの推進のため、地域支援職員を増員し、地域コミュニティ活動をサポートしてまいります。
加えて、地域コミュニティ活動の拠点となる地区公民館については、施設の老朽化等を踏まえ、維持補修や機能改善を順次進めてまいります。
さらに、芥見東・芥見南地区においては、まちづくり活動の推進のため公民館と児童センターを合築し、新たな地域活動拠点整備に向けた協議を進めてまいります。
また、団地内コミュニティの弱体化が課題となっている市営住宅において、空き室を有効活用した学生の入居を促進する取り組みを、中部学院大学と連携して進めてまいります。
次に、自然災害への備えに関しましては、能登半島地震の教訓を踏まえ、国が推進するプッシュ型支援にも対応できる北部防災備蓄拠点の整備を進めるとともに、福祉避難所の環境の充実を図ってまいります。
あわせて、自助・共助の意識を育む「bou-saiジブンゴト化プロジェクト」を始動させるなど、地域防災力の強化に向けた各種対策を進めてまいります。
さらに、能登半島地震の被害状況を踏まえ、木造住宅の耐震改修工事に対する助成限度額の引上げ措置を継続するとともに、助成件数を拡大するなど、引き続き地震対策に取り組んでまいります。
また、効果的な消防体制の構築に向け、現在建設中の北消防署・消防本部整備工場をはじめ、救助活動等拠点施設の整備など、大規模災害時の受援体制の強化を図るとともに、モバイル通信網を利用したIP無線機の導入や消防OAシステムの見直しなど、消防DXへの取り組みも積極的に進めてまいります。
地球温暖化対策に関しましては、市民の脱炭素化の取り組みを支援するため、家庭用太陽光発電設備や蓄電池の導入にかかる助成を継続するほか、新たに省エネ性能の高い冷蔵庫やエアコンの購入を促進する助成を実施するとともに、「ゼロカーボン市民懇談会」の開催などを通じ、市民の皆様にライフスタイルの脱炭素化に向けた行動変容を呼びかけてまいります。
また、市民の安全を守る防犯対策につきましては、通り魔事件や闇バイトによる凶悪犯罪が各地で頻発している中、地域の安全確保は喫緊の課題となっております。
このような社会的不安に対処するため、地域や警察と協力して犯罪の抑止に注力するとともに、防犯カメラなどの設置を通じて、地域の防犯意識を高め、市全体の防犯力の強化を図ってまいります
令和7年度予算及び行財政運営
次に、新年度(令和7年度)予算案の総括について申し上げます。
まず、歳入についてであります。
歳入の根幹である市税収入については、個人市民税において、定額減税の影響の縮小による18億円の増や、給与所得等の増加による12億円の増を見込むほか、法人市民税が法人収益の増により6億円の増となるなど、市税全体で前年度と比較し、38億円、率にして5.8%増の687億円を計上しております。
また、税外収入では、地方消費税交付金について、物価高騰等による個人消費の増加などにより15億円の増を見込むほか、地方交付税については、本年度(令和6年度)の決算見込み及び地方財政計画等を勘案し、23億円の増を見込むなど、これら一般財源の総額は、前年度に比べ41億円の増となる見込みであります。
歳出については、社会保障関係経費が児童手当拡充の通年化や、私立保育所等施設型給付の増加などにより、引き続き増加するとともに、投資的経費は、名鉄名古屋本線鉄道高架化事業や民営化保育所等施設整備費助成、長良川国際会議場の大規模改修などにより増加しております。
この結果、令和7年度の予算規模は、
一般会計 1,971億円
特別会計 1,352億6,610万円
企業会計 574億7,023万8千円
総計 3,898億3,633万8千円
となり、
これを令和6年度当初予算と比較いたしますと、
一般会計で 110億6,000万円、 5.9%の増
特別会計で 30億 30万円、 2.3%の増
企業会計で 7億1,905万1千円、1.2%の減
全体では 133億4,124万9千円、3.5%の増
となったところであります。
人口減少・少子高齢化が進む中、社会保障関係経費の増加、人件費及び物価の高騰など、増加の一途を辿る財政需要に対応し、持続可能な行財政運営を行っていくためには、財政規律を確保しつつ、「岐阜を動かす」未来への投資やシティプロモーションをはじめとする定住人口・交流人口の拡大につながる施策を展開し、自主財源の確保に努めることが重要であります。
今後も、中期財政計画における見通しを踏まえつつ、行財政改革大綱2020に基づく様々な改革を積極的に進めるとともに、EBPMや限られた財源を最大限に活用するワイズスペンディングを常に意識しながら、持続可能なまちづくりに資する行財政運営に取り組んでまいります。
おわりに
以上をもちまして、市政に対する所信の一端と令和7年度に重点を置いて取り組む施策の大要を申し述べました。
議員各位をはじめ、市民の皆様の御理解と御協力を賜りますようお願い申し上げます。
なお、予算に関係いたします条例なども提案いたしておりますが、それぞれ提案理由が付記してありますので、よろしく御審議の上、御決定を賜りますようお願い申し上げます。
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