WLB vol.9
Special Feature これからの女性が輝くカタチ
女性の可能性を広げる教育を!
国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学
理系分野に対する女性の興味・関心を高めたい
キャリア教育×女性活躍
女性の活躍する場が確実に広がる一方で、今も性別による固定観念などにより、女性が少ない分野や職種もあるのが現状です。若い世代が性別を問わず自分らしい進路や職業を選択するためには、早期からさまざまな可能性を知ってもらうことが必要。そんな思いから、次世代を担う女性に対するキャリア教育プロジェクトが始まっています。
企業における多様性が求められている昨今、特に理系分野で女性人材が少ないことは、大きな課題の1つとなっています。特に、日本における研究者の女性割合は、17.8%(2022年3月)と、諸外国に比べて非常に低い水準にあります。その背景には、理系に進学する女子生徒が少ないことも、原因として挙げられます。女性の少ない分野で女性比率を高めることは、より多様な考えやアイディアが集まることにつながり、新たな研究や製品が生まれる可能性を秘めていると考えられます。
そこで岐阜大学では、2023年度に岐阜県と共同するほか、教育機関や地元企業などの連携機関と協力し、県内の女子中高生と保護者、教員などを対象に、理系進路選択を応援する、「ぎふ理系女子はばたき応援プロジェクト」をスタート。
プロジェクトの事務局を担う男女共同参画推進室で、室長を務める大藪千穂副学長は「中高生は、女子が理系に対する苦手意識を抱きやすく、進路選択に男女差が開き始める時期。しかし、得意科目だけで進路を決めると、職業の選択肢や可能性を狭めてしまうことになりかねません。この時期に魅力ある企業や研究施設、ロールモデルなどに出会い、理系分野に興味を持つことが、理系分野で活躍する女性の増加につながると思います」と、取り組みの意義を語ります。
同プロジェクトの取り組みは、大学や企業の女性研究者が中学・高校に出向き、自分の経験や仕事のやりがいを伝える出前授業、企業・研究施設を訪れる見学会、女性研究者や技術者の話を聞く講演会や交流会など、多岐にわたります。事業を運営する男女共同参画推進室の落合絵美助教は、「参加者の中には『こんな仕事もあるんだ』との気づきを得たという声も多くありました。地域の企業や研究機関を知り、キャリア選択の一歩にしてほしい」と話し、多くの生徒や企業の参加を呼びかけています。
県内企業を訪問する企業見学・交流会バスツアー
岐阜市内で健康補助食品・医薬品を製造するアピ株式会社の研究拠点などを見学する「企業見学・交流会バスツアー」が行われ、中高生17名が参加しました。訪問した長良川リサーチセンターでは、女性研究者4名が、会社に入った経緯や現在の仕事について語った後、参加者と交流。「理系・文系の選択に悩んでいる」「どんな視点で進路を選べばいいか分からない」などの悩みに対し、「今は可能性を狭めず、多くのことに興味を持つことが大切」「出産後も仕事に復帰でき、育児をしながらキャリアを積めるかは、女性にとって重要。会社を選ぶ際に注目してみては」など、アドバイスを伝えました。
その後は、施設内の実験室を見学。研究施設で働く女性や職場環境に触れた参加者の中には、「研究者に憧れていたが、難しそうと諦めていた。今日の話を聞いて、もう一度チャレンジしたいと思った」という声も聞かれ、将来をあらためて考える機会になったようです。
アピでキャリアアップ推進室長を務める荒木陽子さんは「女性研究者は増えつつあり、当社でも40%を占めています。県内にこうした企業があることを若いうちから知ってもらい、ぜひ理系分野へ進んでもらいたい」とエールを送りました。
進路選択の幅を広げる中学生向け大学見学会を開催
岐阜大学では、岐阜市教育委員会と連携し、岐阜市立長良中学校の2年生を招いた「大学見学会」が開催されました。大藪副学長が大学内の学部や卒業後の進路などを説明した後、理系分野の大学生・大学院生がリレートークを展開。好きなこと・やりたいことを重視した進路選択の経験や、将来のキャリアプランなどについて、熱い思いを伝えました。
その後、大学内にあるものづくり技術の研究拠点「地域連携スマート金型技術研究センター」で、AIを活用した最新の金属加工技術などを見学。
参加した生徒からは「理系の中にも多くの専門分野があり、さまざまな進路の選び方があることが分かった」「理系科目への興味が深まった」などの声が寄せられました。
「ぎふ理系女子はばたき応援プロジェクト」のホームページは下記リンクへ
随時情報を更新しております。ぜひご覧ください。
国内の大学初の「DEIB宣言」を制定
東海国立大学機構では、教員や学生などの多様性が大学の基盤であり、イノベーションの源泉という考えのもと、互いを認め合って信頼関係を築き、個々の能力を最大限に発揮できる環境に向けて、差別や格差を積極的に是正した公正な教育・研究・労働環境の提供を目指してきました。さらに2022年には、多様性(Diversity)、公正性(Equity)、包摂性(Inclusion)の推進に加えて、すべての多様な人が帰属感(Belonging)を得られる組織であることを目標とした「DEIB宣言」を制定。帰属感を取り入れた宣言は国内の大学初となり、注目を集めています。
教育システムの体系化と多様化を実現
株式会社 光広(HIROSEYA)
4つの教育を組み合わせスピーディーで着実な育成へ
人材育成×女性活躍
岐阜エリアに、キレイを追求したライフスタイルを提案する4店舗を構えている株式会社光広(HIROSEYA)では、「スタッフに長く勤めてほしい」という思いから、教えるべきことを体系化し、人材育成システムを整備することを決意。社内教育はもちろん、外部のセミナーや教育プログラムを積極的に取り組み、多角的にスキルアップを支援する仕組みを構築しました。
新たに入社したスタッフには、教育担当者1名をつけるシスター制度を実施。覚えてもらいたいことを項目化した「新人教育チェックシート」を用いて、店舗作業を身につけることを目指します。専門的な知識や技術の習得には、大手化粧品メーカーが開催しているセミナーに参加。キャリアに応じたスキルを学んだ上で、店内で実践練習を積んでいます。
また2022年からは、高い売上やリピーター率などの結果につながる行動に着目した人材教育システム「行動科学マネジメント」を同業者約50社とともに開発し、社内に導入。オンライン動画で、お客様にかける言葉や店内での動きに秘められた意味を学んでいます。
4ヶ月前に入社した神谷真衣さんは、シスターを務める広瀬佐知子さんから指導を受け、こうした多面的な教育を体験中。「身につけるべきことが見える化されているので、苦手なことは繰り返し学ぶことができ、少しずつできることが増えていくことが、モチベーションにつながっています。早く先輩方のように動けるよう、多くのことを身につけたいです」と意欲を語ります。
こうした教育の結果、社内にはスタッフが自らSNSでの配信内容を企画するなど、主体的な動きが拡大。神谷さんもデータ管理の改善策を提案するなど、活躍の場を広げています。
光広(HIROSEYA)の人材育成プログラム
・専門知識・技術を習う大手メーカー教育
化粧品業界のグローバル企業が行う教育セミナーを受講して、専門的なスキルを学んでいます。
・教育シスターによる新人教育チェックシート
お茶の出し方や雑務の方法など店舗作業の基礎をチェック項目化して指導しています。
・実戦のスキルを養う店内教育・実習
先輩の指導を受けながら、学んだ知識を店頭での実戦練習で身につけます。
・オンラインで学べる行動科学マネジメント
リピーター獲得につながる行動や会話をステップごとに学びます。
多様な角度からの学びが得られる点が魅力です。
自分がまだできていないことを把握できるので、目標も立てやすいです!
ヒロセヤ コスメラウンジ 忠節
入社4ヶ月目 神谷 真衣さん
(2023年12月当時)
人材教育を強化し、今後はさらにスタッフ1人1人が活躍する方法を考える「自立型組織」を目指していきたいです。
株式会社 光広(HIROSEYA)
広瀬 史貴 代表取締役社長
多様な視点から生まれる新たな発想を
株式会社 タナック
女性の悩みに着目して新商品開発やリニューアルを実施
商品開発×女性活躍
シリコーンやエラストマーなど超柔軟ゲル素材の加工・販売を行う株式会社タナックでは、2015年から自社の素材をいかして、消費者向けのオリジナル製品開発に着手。同時に、初の女性営業職を採用し、女性ならではの発想による企画を進めてきました。「BtoC※の製品開発も、当社初の試み。だからこそ、女性の感性を取り入れ、ニッチでこだわりのあるものづくりをしようと考えました」と、棚橋一将常務取締役は新事業に込められた思いを語ります。
チームをまとめる第二営業開発課の永田まどか係長は、女性の悩みに着目し、さまざまな商品の開発・改良を担当。たとえば骨盤ベルトは、産後や高齢者の尿トラブル改善にも目を向け、自社の伸縮性素材を用いて、日常使いができる薄くて細い形状を実現しました。また、ターゲット層の女性にヒヤリングし、商品の色やパッケージも改良しています。膝サポーターは、足の細い女性にもフィットするよう、フリーサイズからM・Lの2サイズ展開に。カラーラインナップも、目立ちにくいベージュを加えて、使いやすさにも配慮しました。さらに、リンパが集まる耳をゲル素材のリングで包んで血流を促すアイテムは、美容セラピストから「自律神経が集中する耳をマッサージすると、リラックスできて睡眠の質が高まる」と聞き、訴求ポイントを開発当初の「リフトアップ」から「快眠」に一新してPRしています。
「会社が『何でも挑戦していい』と背中を押してくれるので、ゼロからのものづくりにやりがいを感じています」と、笑顔を見せる永田さん。現在は男性社員も加わり、「幅広い意見を取り入れることで、女性だけに偏らない商品づくりができています」と、新商品開発において多様な人材が活躍する意義を実感しています。
※BtoCとは…Business to Consumerの略。企業から一般消費者へ商品やサービスを提供すること。
・今までにない視点でPR
市場で注目されている「快眠」をキーワードに、リフトアップ用アイテムをブラッシュアップ。
・女性に適した色やサイズを展開
女性の足にもフィットするサイズや女性に人気が高い色を加えてリニューアル。
・女性ならではの悩みに着目
産後ケアや尿トラブルの改善に活用してもらうため、パッケージや商品の色を大人の女性向けに。
多様な意見をすり合わせて、よりよい商品開発を目指しています。
オリジナル製品開発を会社の新たな柱にできるよう、注力しています!
営業開発部第二営業開発課係長
永田 まどか さん
女性から見た視点や体感を参考に、当社の強みである伸縮性のある素材をいかしたヒット商品を生み出していきたいと思います!
営業開発部第二営業開発課主任
大村 悠真 さん
こんな女性活躍にもチャレンジ!
2020年から、デザイナーやライター、ウェブデザイナーなどの広告宣伝チームは、子育てなど家庭の事情で在宅でしか働けない女性を全国から10名採用。契約社員として雇用し、家庭の都合に合わせて働いてもらえる環境を構築しています。
社員のほとんどを男性が占めていた当社にとって、女性の感性は、活性化につながる刺激になっています。
今後も女性スタッフを増やしていきたいです。
株式会社タナック
棚橋 一将常務取締役
令和5年度 岐阜市男女共同参画優良事業者が決定!
令和6年2月9日、みんなの森ぎふメディアコスモス みんなのホールで行われた「令和5年度岐阜市男女共同参画優良事業者表彰式」の様子をレポートします。
令和5年度は、株式会社タナックが選ばれ、柴橋市長より楯が授与されました。
同社の棚橋一将常務取締役は、営業開発部に女性従業員を採用し、女性の在宅ワーカーとチームを組んで女性向け商品企画開発を行うなど、積極的に女性活躍を推進している取り組みを発表。「美容や医療の商品開発に女性の目線をいかしている」と話しました。
市長も「今後も個々の能力やスキル、家庭環境に応じた多様な働き方で、家庭と両立しながら活躍できる機会を創出していただきたい」と期待を寄せました。
男性従業員だけの部署に女性従業員を採用し、中間管理職として活動。主婦向けの在宅ワーク支援サービスを利用し、採用した在宅ワーカーとチームを組んで、女性のライフスタイルに合わせた美容やヘルスケア関連の商品企画開発やHPの更新をするなど積極的に女性活躍推進のための取り組みを行っています。
また、地域貢献活動として、学生の工場見学や中学校での講演など次世代の人材育成に寄与しています。さらに、近隣の大学との産学官共同研究・開発を行うなど、SDGsの各目標についての取り組みも多く行っています。
Topics 岐阜市でWLB推進に向けた制度にチャレンジ!
岐阜市では男女が共に仕事と家庭を両立できる働きやすい職場環境づくりを促すため、市内の企業を「ぎふし共育・女性活躍企業」として認定しています。男性が主体的に家事・育児へ参画し、夫婦で共に子育てを行う「共育」を後押しする「共育企業部門」と、女性が能力を十分に発揮して社会で活躍できる取り組みを行う「女性活躍企業部門」の2部門を設定。それぞれの取り組みを積極的に行う企業を認定します。
「ぎふし共育・女性活躍企業」の認定は、WLB推進の第一歩に最適です。認定企業の申請後は、男女共同参画の推進に積極的に取り組む事業者を表彰する「岐阜市男女共同参画優良事業者」に応募してみませんか。表彰された優良事業者を、岐阜市のロールモデルとして広く発信することで、”働きやすいまち・岐阜市”を目指します。
WLBのトビラ
知っておきたいアンコンシャス・バイアス
アンコンシャス・バイアスとは無意識の偏見や思い込み
アンコンシャス・バイアスとは、これまでの経験や育った環境から、自分では気づかないうちに抱いている偏見や思い込みのことをいいます。これは誰もが持っているもので、それ自体は悪いことではありません。しかし、アンコンシャス・バイアスに気づかずにいると、知らず知らずのうちに相手を傷つけてしまうこともあります。まずは、自分が持っているアンコンシャス・バイアスに気づくことが必要です。また、アンコンシャス・バイアスの中でも、「女性はこうあるべき」「男性はこうあるべき」という偏見や思い込みを「ジェンダー・バイアス」といいます。
※「ジェンダー」とは、社会の中でつくられた「女らしさ」「男らしさ」のイメージを指します。
アンコンシャス・バイアスが企業の成長を阻害することも
近年、企業内で多様な人材を活かし、その能力が最大限に発揮できる機会を提供することで、イノベーションや価値創造につなげる「ダイバーシティ経営」が注目されています。しかし時には、年齢や性別、国籍など、個々が持つさまざまな特性に対する思い込み、つまりアンコンシャス・バイアスが、ダイバーシティの推進を阻害する原因になってしまうことがあります。
大切なのは、自分が持っている固定観念にとらわれず、1人ひとりを尊重することです。1人ひとりの顔や性格が違うように、さまざまな価値観や考え方があることを認めた上で、適した声のかけ方や対応などを考えることが大切です。
岐阜労働局からのお知らせ
「年収の壁・支援強化パッケージ」
パート・アルバイトで働く方が「年収の壁」を意識せずに働ける環境づくりを後押しします。
「106万円の壁」対応
パート・アルバイトで働く方の、厚生年金や健康保険の加入に併せて、手取り収入を減らさない取組を実施する企業に対し、労働者1人当たり最大50万円の支援をします。
<キャリアアップ助成金>
「社会保険適用時処遇改善コース」
「130万円の壁」対応
パート・アルバイトで働く方が、繁忙期に労働時間を延ばすなどにより、収入が一時的に上がったとしても、事業主がその旨を証明することで、引き続き被扶養者認定が可能となる仕組みを作ります。
配偶者手当の見直し
配偶者の収入要件がある配偶者手当について、配偶者の働き方に中立的な制度とするための見直しを進めていただけるよう、その手順等をわかりやすい資料にまとめました。
ワタシらしく、はたらこ。
WLB
ワーク・ライフ・バランス
vol.9 2024年2月発行
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男女共生・生涯学習推進課
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