応急手当の基礎知識
1 傷病者管理法
(1)保温
- 体温低下、顔面蒼白、ショック症状などが見られるときは、十分毛布などで保温する。
- 服がぬれているときは、服を脱がせてから保温する。
- 冷えた地面やコンクリートの床に寝かせるときは、傷病者の地面に接する部分の毛布を厚くする。
(2)体位管理
- 傷病者の症状に応じた体位を保つことは、呼吸や、循環機能を維持でき、また苦痛を和らげ、症状の悪化を防ぐのに有効。体位を強制することなく、傷病者の希望する楽な体位を取らせる。
- 体位を変えるときは、痛みや不安を与えないように注意する。
仰臥位
- 背中を下にした最も安定した一般的な姿勢。
- 全身の筋肉に無理な緊張を与えない。
回復体位
- 傷病者を横向きに寝かせ、下あごを前に出し、両肘を曲げ、上側になる膝を約90度曲げた姿勢。
- 窒息防止に有効。
- 薬毒物を飲用した疑いがあるときは、胃から十二指腸に毒物が移動するのを避けるため、左を下にした体位をとらせる。
膝屈曲位
- 仰臥位の姿勢から膝を立てた姿勢。
- 腹部の緊張と痛みを和らげる姿勢で一般的には腹部などの痛みを訴えたときに用いる。
- 傷病者によっては仰向けではなく横を向く姿勢をとるときがあるが、傷病者にとって楽な姿勢でよい。
腹臥位
- 腹ばいにし、顔を横に向ける姿勢。
- 嘔吐や誤嚥があるときや、背中にけがをしているときに用いる。
半座位
- 上半身を軽く起こした姿勢。
- 呼吸の苦しい傷病者や、頭にけがをしているとき、脳血管障害が疑われるときに用いる。
座位
- 座った姿勢。
- 呼吸、胸が苦しい傷病者や、気管支喘息があるときに用いる。
足側高位
- 仰臥位で足側を高くした姿勢。
- 出血性ショックや、貧血などのときに用いる。
体位管理の注意事項
- 傷病者の希望する、最も楽な体位をとらせる。(体位の強制はしない)
- 原則的に、外傷部位は、高位に保つ。
- 体位変化により状態が悪化するときがあるので、体位変化をするときはできるだけ緩やかに行う。
2 搬送法
搬送は、応急手当がされた後に行うものであり、傷病者の状態を無視した安易な搬送はしてはいけません。事故現場からいかに傷病者に苦痛を与えず安全に搬送するかを考えて行う必要があります。
(1)担架搬送法
担架搬送は、毛布等で包み、傷病者を担架に固定し、常に水平に保ちながら、原則として足部側から搬送する。搬送中には、動揺や、振動を与えないように細心の注意を払う必要がある。
(2)徒手搬送法
徒手搬送は、狭い通路や階段などで担架が使用できない場所における傷病者の搬送や、事故現場などにおいて緊急に安全な場所に移動させるときに用いる。徒手搬送は、慎重に行っても傷病者に与える影響が大きいことを認識し、徒手搬送での移動は必要最小限にとどめるべきである。
ア 1人搬送法
- 傷病者の背部から、脇の下に手をいれ、抱きかかえるようにして起こし、両手で傷病者の片方の前腕を保持してお尻を吊り上げるようにして移動する。
- 傷病者を背負い、膝下から腕を入れて両膝を抱え込む。
- 傷病者の両腕を右図のように平行又は交差させて両腕を保持して搬送する。
- 乳幼児や小柄な人は横抱きで搬送する。
- 毛布やシーツで全身を包み、両肩を浮かすようにして頭部側に引っ張って移動させる。
- このときには、床面の凹凸や突起物を考慮する。
※1名による搬送は、傷病者の胸腹部を圧迫することが多いので、やむを得ないときにとどめ、複数の人による搬送を心掛ける。
イ 2人搬送法
- 1人は背部側から抱きかかえ、もう1人は傷病者の下肢を交差させ抱える。
- 2人が同時に持ち上げ、足部側から搬送する。
- 傷病者を挟んで向かい合わせに立ち、傷病者を搬送方向側の手でヒューマンチェーンを組み、傷病者の臀部と自分の反対側の脇の下を抱え、座らせた状態にして前方に搬送する。
※2人で搬送するときは、傷病者の首又は頭部が前屈する恐れがあるので、気道確保に留意し、搬送者の歩調を合わせ、傷病者に動揺を与えない。
ウ 3人搬送法
- 傷病者の両側に正対し、傷病者の上で手の位置を決め、その位置で両側から傷病者の背部側に添わせ静かに手を入れ、3人で呼吸を合わせ同時に膝上の位置まで持ち上げる。
- 持ち上げた後に、頭部側の足を半歩前に進めて膝の上に傷病者を乗せた後に立ち上がり、足側から搬送する。
応急担架作成法
竹竿(物干し竿)と毛布を使用した担架作成
- 毛布の1/3部分に竹竿を1本置き、片方を折り返す。
- 患者の肩幅に合わせ、折り返ししろ15センチメートル以上確保してもう1本を置き、毛布を折り返す。
※衣服を用いた方法として、5枚以上の上着を使用(右上図参照)して、作成する方法もある。
3 骨折に対する応急手当
(1)骨折した部位を確認する
- どこが痛いかを聞く。
- 痛がっている部位の確認をする。(確認するときは痛い部位はむやみに動かしてはならない)
- 出血の有無を確認する。
- 骨折の疑いがあるときは、骨折しているものと判断して、手当てをする。
(2)固定要領
ア 上肢の固定
- 前腕及び指先側の骨折のときは上腕中央から指先までを次ページ図1のとおりの順序で固定する。
- 上腕、肘の骨折のときは肩から関節までを図2のとおり固定する。
- 三角巾があれば、三角巾を使用し固定する。図2・3(三角巾が無いときはラップなどで巻いて固定)
イ 下肢の固定
- 下腿部のとき、副子や傘などを大腿中央部から指先までの内外両側に当て三角巾やラップなどで固定する。
- 大腿部のとき副子などを右図のように患肢の外側で胸部から足関節まで、他の副子を内側に当て、両側から挟みこむように支持し、三角巾やラップで巻き固定する。
(3)包帯法
- 被覆は、傷の保護と細菌の進入を防ぐため、できるだけ清潔なものを用いる。
- 出血があるときは、十分に厚くしたガーゼなどを用いる。
- キズが開いているときは原則として滅菌されたガーゼなどを用い、不潔なガーゼ類は用いない。
- 包帯は強く巻きすぎると血行障害を起こすことがあるので注意する。
- 結び目は、キズの上を避ける。
三角巾を用いた被覆服法(参考)
4 首に対する応急手当
交通事故や転落などで首にけがを負った時は、首が動かないように固定する。
(1)首の痛みを確認
- 意識があれば本人に首が痛くないか確認する。
- 「首は痛くないか?」「手足が動くかまたはしびれはないか?」など本人が首に痛みがないと言っても、首は動かさないように伝える。
(2)首を固定
意識があれば首を動かさないように伝え、両手で相手の頭を動かないように支える。(ボーリングの球を持つ感じ)
(3)意識がないとき
相手に意識がなければ首に痛みがある時と同様に首が動かないように固定する。
※プールへの飛び込みなどでは、額に打撲痕があり、判断の目安になる。
(4)移動方法
- 首にけががあるとき、周囲が安全であればそのままの状態で救急車の到着を待つ。
- 周囲が危険であるときは、協力者を求め平らで固い板などの上に乗せて、全身が動かないように固定して安全なところまで搬送する。
※本人が歩けると言っても上記の方法で搬送する。
首の骨は頭を支える支柱であるとともに、脳と体の末端をつなぐ重要な神経が集中しているところである。
5 熱傷(やけど)に対する応急手当
やけどの程度はやけどの深さとやけどの広さから判断する
(1)やけどの深さの確認
やけどの深さは、やけどをした部位の皮膚の色で確認する。
- 赤い→1度熱傷(痛みあり)
- 水疱や水疱が破れている→2度熱傷(痛みあり)
- 白っぽいまたは真っ黒→3度熱傷(痛みなし)
(2)やけどの広さの確認
やけどの広さは大まかに、次の方法で調べる事ができる。
- 手掌法→傷病者の手のひらを体表面積の1パーセントと考えてやけどの面積を調べる。
- 9の法則→大人のときに用いる。
- ブロッカーの法則→乳児のときに用いる。
※やけどの程度が下記のときは、「重症」と判断される。
- 2度の熱傷で、体表面の30%以上の熱傷
- 3度の熱傷で、体表面の10%以上の熱傷
- 顔の熱傷で、3度の熱傷または鼻毛が焦げたり、痰が黒色になっている熱傷
※高齢者や乳児では、熱傷の広さが狭いときでも重症の場合がある
(3)1度の熱傷、狭い面積の2度熱傷の手当
- 基本はきれいな冷水で患部の痛みが和らぐまで冷やす。
- 痛みが和らいだら、患部にきれいなガーゼ等を当て被覆する。
- ※医療機関で受診するまでは、軟膏などの薬を塗るのは避けた方がよい。
- ※衣服などの衣類は脱がさずに、そのまま冷やす。(薬品によるやけどは除く)
- ※水疱は破らない。(薬品によるやけどは除く)
- ※熱傷面積が広いときは体の冷えすぎに注意する。
(4)重症な熱傷
- 熱傷の広さが大きいとき、きれいなシーツなどで体を包み、患部の感染防止に努める。
- 3度の熱傷で範囲が狭いときは、きれいなガーゼ等を当てて被覆する。
※重症熱傷のときは、早く医療機関で処置を受ける必要があるため、冷却することに時間を費やさない。
(5)薬品による熱傷
- 薬品の付着した衣類などは素早く脱がせ、体についた薬品は流水で20分程度洗い流す。
- 一般的には水疱を破らないように注意する。(水泡の中に薬品が浸透しているときは洗い流す)
- 患部にきれいなガーゼ等を当てて被覆する。
6 溺水
(1)溺れている人を助ける
泳力に自信があるからと過信して泳いで助けに行くことは極力避け、ロープや竹竿、浮き輪などを用いる。(溺死者のほとんどが助けに向かった人である)
※竹竿を使用する際は、目や顔を突くときがあるので注意すること。
(2)けがの確認
意識があれば本人に首は痛くないか確認し、意識がなければ額や顔にけががないか確認し、あれば首のけがに対する応急手当を行う。
(3)心肺蘇生法の実施
意識が無く、呼吸もなければ心肺蘇生法を行う。
- ※首にけがのあるときまたはおそれがあるときの気道確保は、下顎挙上法を行う。
- ※無理にお腹を押さえて水を吐かせる必要はない。
- ※心肺蘇生中に傷病者が水を吐いたら、顔を横に向け指拭法など(異物除去法参考)口の中をきれいにしてから心肺蘇生を行う。ただし、首にけががあると判断される場合には、体ごと横に向け、頭が下がらないように保持をする。
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