条例説明と主なご意見

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ページ番号1003464  更新日 令和3年8月31日

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条例の名称について

説明
「参加」は仲間として加わることですが、「参画」は、単に参加するだけでなく、企画・立案や決定にも自らの意思で関わり、意見や考えを出し、負担も責任も担うという主体的かつ積極的な態度や行動をいいます。男女共同参画は、男性も女性も、対等な個人としてあらゆる分野に参画していくことをいいます。
国では内閣府に男女共同参画局があり、内閣官房長官を議長とする男女共同参画会議が設置されています。また、平成11年、男女共同参画社会基本法を公布・施行し、それに基づき平成12年には男女共同参画基本計画を策定しました。こうした国の動きを踏まえ、岐阜市でも条例名には「男女共同参画」を使用し、この条例をより多くの市民の方に受け入れていただくよう、普及を図っていきたいと考えます。
また、「男女平等」は当然あるべき姿とし、それを踏まえて男女共同参画型の社会を目指していく姿勢を、岐阜市として明らかにしたいと考えます。
主なご意見
「男女共同参画」という言葉はわかりにくいので「男女平等」を使いたい。即ち「岐阜市男女平等推進条例」がよいのではないか。

目次

前文
第1章 総則(第1条─第9条)
第2章 基本的施策等(第10条─第19条)
第3章 男女共同参画推進審議会(第20条)
第4章 雑則(第21条)
附則

前文

日本国憲法は、すべて人間は平等であり、その性別により差別されることなく、個人として尊重されることを保障している。
しかしながら、現状においては、性別による固定的な役割分担意識や男性優位の価値観による女性差別が根強く存在している。
国は、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約を軸とした国際社会の動きと協調して、男女共同参画社会の実現に向けて施策を展開してきており、岐阜市もこれと連動して取組を進めてきたが、なお多くの課題が残されている。
すべての市民が性別にかかわらず一人の個人として豊かで実りある人生を送ることができる社会を実現するためにも、男女がその対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保されることは、大きな意味を持つものである。
ここに、私たち市民は、男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受し、かつ、共に責任を担う社会を実現するため、男女共同参画を推進する取組を総合的かつ計画的に推進することを決意し、この条例を制定する。

説明
まず、男女平等の基本理念をうたい、この理念の実現に向けての国や岐阜市の取組、また未だ多くの課題が残されている現状にふれます。さらに、男女が社会のあらゆる分野で対等に個性を発揮できるような男女共同参画社会を実現することの大切さを述べるとともに、男女共同参画を推進する市民としての決意をうたいます。
主なご意見
  • 岐阜の地域特性にふれる。(事務局:本条例の前文にふさわしい特性をどのような表現で盛り込むかについて、さまざまな観点から議論がなされました。しかし、本条例の内容に関連した岐阜市全般にわたる特性を、限られた字数で述べるのは非常に難しいと判断し、最終的には、法令の前文がもつ本来の意義に則り、制定の理念をうたいあげる内容にしました。)
  • 憲法による男女平等の規定を盛り込む。
  • 男女共同参画の理念をうたう。
  • 格調高くて、よい。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、男女共同参画の推進に関し、基本理念を定め、市、市民及び事業者の責務を明らかにするとともに、市の施策について基本的な事項を定めることにより、男女共同参画社会の実現を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。

説明
この条例の目的を述べます。岐阜市が独自の条例を制定するのは、市、市民、事業者のそれぞれが、男女共同参画社会を実現するための責務を自覚し、一体となって行動していくためです。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

  1. 男女共同参画
    男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって家庭、職場、学校、地域その他の社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うことをいう。
  2. 積極的格差是正措置
    社会のあらゆる分野における活動において男女間の参画の機会の格差を是正するため、必要な範囲で、男女のいずれか一方に対し、その機会を積極的に提供することをいう。
  3. 事業者
    市内において公的機関若しくは民間を問わず、又は営利若しくは非営利を問わず事業を行う個人及び法人その他の団体をいう。
  4. セクシュアル・ハラスメント
    性的な言動に対する相手方の対応によって不利益を与え、又は性的な言動により相手方の生活環境を害することをいう。
  5. ドメスティック・バイオレンス
    配偶者、恋人その他親密な関係にある者(以下「配偶者等」という。)からの身体的、心理的若しくは性的な危害若しくは苦痛となり、又はそのおそれのある行為、経済的虐待及び配偶者等による社会的隔離をいう。
説明

この条例で使われるいくつかの用語の定義をします。

  1. 男女共同参画 「参画」は「参加」とは異なり、単に参加するだけなく、企画・立案や決定にもかかわり、責任も担うということです。「男女共同参画」は、男女が対等な個人としてあらゆる分野に参画することをいいます。それによって、利益や喜びも分かち合うことができるのです。男女共同参画が進むことによって、例えば男性だけが家計責任を負い、女性だけが子育ての責任を負うというような、固定的な役割に縛られることなく、男女ともより豊かな生き方を選ぶことが可能になるのです。
  2. 積極的格差是正措置 「ポジティブ・アクション」「アファーマティブ・アクション」ともいいます。これまで、就労・就学の機会、職場での昇進、育児・介護の分担など、社会のさまざまな分野で男女間に格差が作り出されてきました。こうした格差を軽減する目的で、男女どちらかに対し積極的に機会を与えるなどの対応をすることです。
  3. 事業者 民間企業、公的機関、教育機関、各種団体、グループなど事業を行うあらゆる個人、法人、団体を含みます。従業員が家族だけの自営業者や、自治会、PTAなども含みます。
  4. セクシュアル・ハラスメント 「性的な言動に対する相手方の対応によって不利益を与え」とは、例えば、職場の上司が部下に性的関係を要求し、部下が拒否した場合、そのことを理由に部下にとって不利益となる扱いをすることなどが考えられます。「性的な言動」には、性的な冗談やからかい、個人的な体験談を話したり聞いたりする、ヌードポスターの掲示なども含みます。「生活環境を害する」とは、精神的苦痛を与えることも含みます。
  5. ドメスティック・バイオレンス ドメスティック・バイオレンスには、身体への暴力だけではなく、次のようなものも含まれます。
    • 「心理的な危害若しくは苦痛となり、又はそのおそれのある行為」とは、「口答えをするな」「だれに食わせてもらっている」「たたき出すぞ」などの言葉でばかにしたり、ののしったり、おどしたりする。無視する、大切にしているものを壊す、など。
    • 「性的な危害若しくは苦痛となり、又はそのおそれのある行為」とは望まない性行為を強要する、ポルノなどを無理やり見せる、避妊に協力しない、など。
    • 「経済的虐待」とは、生活していけるだけの生活費を渡さない、仕事をすることに反対する、など。
    • 「配偶者等による社会的隔離」とは、実家や友人とのつき合いを制限する、電話や手紙をいちいちチェックする、など。
主なご意見
  • 「男女共同参画」の定義の中で、「学校」とあるが、学校も職場のひとつなのであえて取り上げなくてもよいのではないか。(事務局:ここでいう「学校」は教育の場としての学校です。したがって男女共同参画は教育を受ける生徒・児童も対象とします。)
  • 積極的改善措置ではなく、積極的格差是正措置という表現が適当である。
  • ドメスティック・バイオレンスの定義に、性的、経済的な暴力も含める。
  • 「市民」の定義は必要ないか。(事務局:条例では、市民には、自治体住民のほか、自治体の中の事業所に勤務するもの、旅行などで一時的に自治体に足を踏み入れる者も含みます。したがってこの条例は岐阜市内にいる人すべてに適用されます。)

(基本理念)

第3条 男女共同参画は、次に掲げる事項を基本理念として推進されなければならない。

  1. 男女があらゆる場において性別による差別的取扱いを受けることなく、個人として尊重され、その能力を発揮する機会が確保されること。
  2. 性別による固定的な役割分担等に基づく社会の制度及び慣行が、男女の社会活動の自由な選択に影響を及ぼすことのないよう配慮されること。
  3. 市及び事業者における方針の立案及び決定に、男女が共同して参画する機会が確保されること。
  4. 男女が、相互の協力及び社会の支援のもとに、家庭生活における活動及び社会生活における活動に対等に参画すること。
説明

生物学的な性の違い(セックス)に対し、育っていく過程で、さまざまな社会的、文化的な環境によって身につく性差観念を「ジェンダー」といいます。いわゆる「男らしさ、女らしさ」という概念、「男は仕事、女は家庭」という考え方などは、ジェンダーに含まれます。2.の「固定的な役割分担」は、ジェンダーに基づいて男女の役割を分けることで、例えば「家事・育児・介護は女性の役割」「団体の長には男性がなるべき」「お茶を入れるのは女性の仕事」など、従来、男女のあるべき姿とされてきた考え方です。
社会制度上だけでなく、家庭、職場、学校、地域などでの慣行においても、ジェンダーが男女の生き方を縛らないようにすることが、男女共同参画社会の実現には必要です。

主なご意見
  • 「学校をはじめとするすべての保育、教育の場において男女共同参画が配慮されていること」などのように、「学校」という言葉を入れてほしい。(事務局:「基本理念」の中では、具体的な場をあげないで「あらゆる場」という表現を用います。学校での活動は「社会活動」に、また学校は「事業者」に含まれます。)
  • 2.は、「性別による固定的な役割分担等に基づく社会の制度や慣行を是正し」とすべきではないか。(事務局:例えば、「神社の巫女は女性である」などの慣行に条例が踏み込むのは難しいと考えます。また、例えば「大相撲の土俵に女性を上らせない」という慣行は、このことが男女共同参画を阻む場合には問題とするべきですが、議論が熟すのを待たなければならない面もあります。これらの点から「是正する」という言葉を入れないこととしました。)
  • 3.は、「市及び事業者」だけだと、自治会やPTAは抜けてしまうのではないか。(事務局:第2条3.の定義により、自治会、PTAも事業者に含まれます。)

(実現すべき姿)

第4条 市、市民及び事業者は、次に掲げる事項を男女共同参画の推進に当たっての実現すべき姿とする。

  1. 家庭においては、男女が共に子育て、家族の介護その他の家庭生活における活動にかかわり、これと職業生活及び地域における活動を両立することができ、家族それぞれが従来の性別役割分担意識にとらわれることなく生き方を選択できること。
  2. 職場においては、男女間に募集、採用、配置、賃金、昇進等に性別による格差がなく、方針の立案、決定及び実施に等しく参画する機会が確保され、男女が共にゆとりをもって仕事及び家庭生活を両立できる環境であること。
  3. 事業活動及び社会経済活動の場においては、性別による差別的取扱いを行わないこと。
  4. 学校をはじめとするあらゆる教育及び保育の場においては、男女共同参画の視点を取り入れ、性別にとらわれず個性と能力を尊重する教育、指導及び保育を行うこと。
  5. 地域においては、固定的な性別役割分担意識又はそれによる慣習やしきたりにとらわれず、男女が連帯して活動に参画すること。
説明

第3条の基本理念に基づき、岐阜市、市民、事業者がどのような姿を実現していくべきか、具体的に描きます。

  1. 家庭での家事・育児・介護、自治会などの地域活動、生活費を得るための労働などのいずれについても、男女どちらかだけが負担を強いられるのではなく、男女が共にその責任を分かち合うことを基本姿勢とし、より豊かな家庭生活を実現していくことを目的としています。また、「女の子は大学に行かなくてもよいから、家事手伝いをしなさい」「男の子は家の中で本を読むより外で遊びなさい」など、ジェンダーに縛られた子どもへの接し方が子どもの生き方を狭めてはいないか、見直してみる必要があります。
  2. 職場では、性別が理由で女性が方針の立案、決定及び実施の場から排除されてはならないのはもちろんですが、そのためには、職場自体が仕事と家庭の両立ができる条件を整備していかなければなりません。このことはILO(国際労働機関)の「家族的責任を有する男女労働者の機会及び待遇の均等に関する条約」の中にも盛り込まれており、日本も平成7年に批准しています。
  3. 具体例としては、事業主、企業家が女性であることで融資、取引慣行などで不利益を受けないこと、また、住宅の貸借、売買などの行為においても、女性であるために不利益を受けないこと、などが考えられます。また、事業所の窓口や営業活動中の女性職員に対し、「女ではだめだから男を出せ」「だれか男性に出直して来てほしい」などと言うことも、ここでいう「性別による差別的取扱い」になります。
  4. 学校の授業だけでなく、進路指導、清掃活動、課外活動についても適用されます。したがって、「女の子だから文科系」「男の子だから保育士になるのはおかしい」というジェンダーに基づく考え方や指導は適当でありません。また、学校や幼稚園、保育所などで、園児や児童生徒の名前を男女に分け、男の子を常に先に記載する名簿についても見直していく必要があるでしょう。
  5. 地域での「固定的な性別役割分担意識又はそれによる慣習やしきたり」には、例えば、自治会やPTAの集まりで、お茶汲みや灰皿のあとかたづけは女性の仕事とされていること、会長は男性でそのほかの役員は女性という役割分担などが考えられます。
主なご意見
  • 具体的な姿をふくらませて書いてほしい。
  • 「家庭」については、仕事、家庭、地域の活動の両立にふれるだけでは、必ず仕事を持たなければならないという意味にとれる。専業主婦という生き方も認める表現にしてほしい。
  • 「職場」については、概念的な差別ではなく目に見える格差を是正するために、募集、採用、配置、賃金、昇進、再雇用等に性別による格差の解消を盛り込むべきである。
  • 「職場」において「方針の立案、決定及び実施に等しく参画する機会が確保され」というのは、現実的ではないような気がするので、「意欲、能力に応じた均等な機会及び待遇が確保され」としてはどうか。(事務局:「意欲、能力に応じた」とすると、主観的な判断に頼ることになりがちです。男女共同参画を進めるためには、「等しく参画する機会が確保され」とはっきりとうたったほうがよいと考えます。これについては、「理想論でいいのではないか」「いろいろなことを決めていく場に女性を1人でも入れて、女性の意見を反映していくために、原案の表現がよい」というご意見もいただいています。)
  • 「職場」において「格差がなく」という表現があるが、「差別がなく」とすべきではないか。(事務局:ある職場で差別があるかないかは、たとえ雇用者が「差別をしていない」と主張しても、それのみによって判断できるものではありません。差別の有無を客観的に判断するには、最終的には結果として現れた格差を見なければならないと考えます。)
  • 岐阜市のアパレル産業、商業では自営業者が多い。家事においても事業においても、実質的に大きな役割を果たしながら、金融機関、同業者団体などで女性が差別扱いされている現状を把握して、実現すべき姿を示してほしい。
  • 「教育」は、男女共同参画社会の形成にとって非常に重要である。授業だけでなく、その他の指導や課外活動も含める内容に。
  • 「教育」だけでなく「保育」の場も含めてほしい。保育所は男女共同参画のスタートの場として、とても大事である。
  • 「教育」の部分に関して、母親の孤立が社会問題になっているが、地域や社会での支援体制作りが必要なのではないか。(事務局:母親支援、子育て支援については、この条例の中で定めている基本計画の中に、具体的な施策を盛り込んでいきます。)
  • ジェンダーフリー(ジェンダーにとらわれない)教育の一環として、男女混合名簿を採用してほしい。

(市の責務)

第5条 市は、第3条に規定する基本理念に基づき、男女共同参画の推進に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない。
2 市は、施策を実施するに当たり、国、他の地方公共団体、事業者及び市民との連携に努めなければならない。

説明
市は、市政全体にわたって男女共同参画推進にかかわる施策を策定し、実施していく必要があります。
主なご意見
第2項は、「連携に努めなければならない」では弱いので、「連携しなければならない」としてほしい。(事務局:「連携」には相手があり、市だけで行うことはできないので、市としては「努める」という表現にとどめました。ただし、第6条及び第7条で、市民、事業者それぞれの責務として「市が実施する施策に協力しなければならない」としています。)

(市民の責務)

第6条 市民は、男女共同参画について理解を深め、家庭、職場、学校、地域その他の社会のあらゆる分野において、男女共同参画の推進に積極的に取り組まなければならない。
2 市民は、市が実施する施策に協力しなければならない。

説明
男女共同参画は、個々人の活動においても、意識して取り組んでいくことが大切です。例えば、自治会の活動、学校の生徒会活動、ボランティア活動など、あらゆる分野で積極的に進めていく必要があります。
主なご意見
まず、市役所の皆さんが、男女共同に関しての理解を深めてほしい。

(事業者の責務)

第7条 事業者は、その事業活動を行うに当たっては、男女が共同して参画することができる体制の整備及び男女共同参画を阻害する要因の解消に積極的に取り組まなければならない。
2 事業者は、市が実施する施策に協力しなければならない。

説明
男女共同参画の推進において、企業内の男女差別の解消は大きな課題です。事業者は、方針の立案、決定の場に男女が共に参画する機会を確保し、職場では仕事と家庭の両立が可能な条件を整えることなどに取り組んでいかなければなりません。
なお、第2条で定義したように、「事業者」には企業だけでなくあらゆる事業を行う個人、団体が含まれます。
主なご意見
  • 企業に対して警告はできないと思うが、指導やアドバイスは難しいことだろうか。(事務局:企業活動は基本的に営利を目的としているため、その活動を制限するのは、ご指摘のとおりいろいろな点で難しいのが実情です。関係課と調整を進めながら検討していきたいと考えます。)
  • 「雇用の分野での男女共同参画を推進するために、市長は事業者に参画状況の報告を求めることができる」としてはどうか。(事務局:事業者に報告を求め、取組を促すことは、効果的な方法であろうと考えます。今後の検討すべき課題とします。)
  • 「市との契約の際には、男女共同参画の推進に積極的に取り組んでいる業者への優遇措置を講ずることができる」としてはどうか。(事務局:市と業者との契約に関しては、対象となる事業者の評価の基準をどう定めるか、また、どのような事業についてこうした条項を適用するのが適当かなど、さまざまな点で検討が必要です。現時点で、ここまで踏み込んだ措置をとるのは難しいと考え、優遇措置を盛り込むことは見合わせました。)

(性別による権利侵害の禁止)

第8条 何人も、家庭、職場、学校、地域その他の社会のあらゆる分野において、性別を理由とする権利侵害及び差別的取扱い並びにセクシュアル・ハラスメントを行ってはならない。
2 何人も、すべての男女間において、ドメスティック・バイオレンス等の個人の尊厳を踏みにじる暴力及び虐待を行ってはならない。

説明
女性に対する権利侵害は、個人同士の問題にとどまらず、女性と男性が対等なパートナーとしてあらゆる分野に参画していくことを阻む、深刻な問題のひとつです。
職場でのセクシュアル・ハラスメントによって、女性が苦痛を感じ、就業環境が不快になったために、能力が発揮できなかったり、就業意欲が低下したり、あるいは、仕事を続けていくことが困難になったりするなど、その影響は深刻です。
セクシュアル・ハラスメントは、職場だけでなく、学校の教職員と生徒・児童との間、地域での自治会活動などでも禁止されます。
ドメスティック・バイオレンスは、男性が、親密な関係にある女性を自分の従属物とみなし、自分の思うままに扱ってもよいという思い込みをすることから生じてきます。女性は人格をおとしめられ、傷つけられ、安全をおびやかされることによって萎縮し、そのことが女性がさまざまな分野で自信を持って参画していくことを阻む大きな要因となっています。
主なご意見
  • 女性に対する暴力の防止及び支援として具体的な防止、救済、支援について盛り込んでほしい。
  • 「何人も」という表現は、あらゆる個人を含むよい表現である。

(公衆に表示する情報に関する制限)

第9条 何人も、公衆に表示する情報において、性別による固定的な役割分担、セクシュアル・ハラスメント等を助長し、又は連想させる表現及び過度の性的な表現を行ってはならない。

説明
憲法に表現の自由が規定されていますが、過度の性的な表現は、それ自体がセクシュアル・ハラスメントであり、権利の侵害となります。本条の規定により、こうした表現を制限することができます。また、広く一般に配布される印刷物やポスターなどで、「男は仕事、女は家庭」といった、性別による固定的な役割分担を連想させるようなイラストや写真を使用することも、見直す必要があります。

第2章 基本的施策等

(基本計画)

第10条 市は、第4条に規定する実現すべき姿の達成に向けて、第5条に規定する市の責務を果たすため、基本計画(以下「基本計画」という。)を策定するものとする。
2 市長は、基本計画を策定又は変更するに当たっては、あらかじめ広く市民の意見を聴くとともに、岐阜市男女共同参画推進審議会に諮問しなければならない。
3 市長は、基本計画を策定又は変更したときは、速やかにこれを公表するものとする。
4 市は、社会情勢の変化に対応するため、必要に応じて基本計画の見直しを図るものとする。

説明
男女共同参画を推進するためには、市が男女共同参画にかかわる施策についての基本計画を策定する必要があります。
基本計画を策定あるいは変更するときは、市民や学識経験者を交えた審議会にはかり、市の広報紙やホームページなどさまざまなメディアを通じて市民の意見を募集するなど、広い視野に立って進めていかなければなりません。
また、社会情勢の変化に対応するため、随時見直しを図っていきます。
主なご意見
  • 基本計画は原則として5年ごとに見直してほしい。(事務局:見直しの時期については、「必要に応じて」と柔軟性をもたせた表現としました。)
  • 「市長はあらかじめ市民の意見を聴く」というのは、どのような方法をとるのか。

(政策の策定等に当たっての配慮及び積極的格差是正措置)

第11条 市は、あらゆる政策を策定し、及び実施するに当たっては、男女共同参画に配慮しなければならない。
2 市は、政策の立案、決定その他の機会において男女間に参画する機会の格差が生じている場合は、積極的格差是正措置を講ずるものとする。

説明
男女共同参画と直接かかわりのない施策についても、不必要に男女どちらかの性を中心とした施策になっていないかどうか、両性の視点が反映されているかどうか、常に配慮をしなければなりません。そのために、政策の立案、決定の場に男女が共に参画していく条件を整えていく必要があります。管理職への女性の登用の促進、各種審議会、委員会などに必ず一定割合の女性委員を入れるなどの積極的格差是正措置も、そうした整備の一環です。
主なご意見
市の施策全体に男女共同参画の視点を行き渡らせるということを盛り込む必要がある。

(情報の収集及び分析)

第12条 市は、男女共同参画の推進に関する施策を策定し、効果的に実施するため、必要な情報の収集及び分析を行うものとする。

説明
市は、常に社会の変化に対応して、男女共同参画の状況や課題を把握し、また、先進的な取組、国や県の動きなどの情報を集め、調査研究を行っていかなければなりません。

(市民及び事業者の理解を深めるための措置)

第13条 市は、男女共同参画の推進について市民及び事業者の理解を深めるため、広報活動等適切な措置を講ずるものとする。

説明
男女共同参画を進めていくためには、市民一人ひとり、個々の事業者の皆さんに理解を深めていただくことが基本です。そのために、市は、広報紙、パンフレットなどによるPR、講座や講演会などの開催をします。

(市民及び事業者の活動への支援)

第14条 市は、市民及び事業者が男女共同参画の推進に関して行う活動を支援するため、学習及び教育の推進、情報の提供その他必要な措置を講ずるものとする。

説明
男女共同参画の推進には、市民や事業者が積極的に活動していくことが大切です。市はそのために、さまざまな支援を行っていくことが求められます。
主なご意見

(事業者の表彰)

第15条 市は、男女共同参画の取組を普及させるため、当該取組を積極的に行い、男女共同参画の推進に顕著な功績があったと認める事業者を表彰することができる。

説明
市は、男女共同参画推進に積極的な取組をする事業者を表彰することによって、そのような取組を奨励し、さらなる普及への啓発に生かしていきたいと考えています。表彰の対象は岐阜市に在住又は在勤の事業者とします。評価される取組は、例えば、企業においては、仕事と家庭を両立しやすい職場の環境づくり、セクシュアル・ハラスメント防止の積極的取組、女性の積極的な登用などが考えられます。
主なご意見
  • 悪いことを禁止したり、制限したりするばかりではなく、積極的な取組を認めて褒めることも、男女共同参画を進めていくよい方法である。
  • 少しずつでも事業者の考え方が変わってくるのではと、楽しみである。

(施策の推進等に係る体制の整備)

第16条 市は、男女共同参画の推進に関する施策を実施し、推進状況を評価するため、必要な体制を整備するものとする。

説明
男女共同参画推進を継続的な取組とするために、安定した体制作りが必要です。
市役所では、市政全般の基本方針にかかわる部局(総合企画部)に男女共同参画室を置き、男女共同参画の視点で総合的に施策を展開していく体制がとられています。また、市役所の関係課に女性行動計画推進員が置かれ、岐阜市女性行動計画の進捗状況調査などにあたっています。本条例の第3章に書かれている岐阜市男女共同参画推進審議会が、推進状況の評価機関としての役割を担うことになります。
こうした市役所内の体制整備を充実するとともに、市民の活動を支援するための体制も整備していきます。
主なご意見
  • 推進状況を評価する体制も整備するべきである。
  • 市役所の管理職レベルの推進委員会を設置することを盛り込めないか。(事務局:条例にはご意見のような具体的な記述はしませんが、管理職レベルで男女共同参画に関する調整を行う機関は「必要な体制」として検討してまいります。)
  • まず、市役所の皆さんが、男女共同に関しての理解を深めてほしい。

(拠点施設)

第17条 市は、岐阜市/生涯学習/女性/センターを男女共同参画の推進に向けた施策を実施し、男女共同参画の取組を支援するための拠点施設とするものとする。

説明
男女共同参画推進の体制整備の一環として、市民の活動を支援するための拠点施設が必要です。そのため、岐阜市では、岐阜市/生涯学習/女性/センターを平成14年1月、JR岐阜駅高架下ハートフルスクエアーGにオープンさせました。女性センターは、学習、交流、情報、相談の4つの機能を備えています。ここは、男女共同参画推進に関する市の取組を発信するばかりでなく、相談事業や交流活動を通じて現状や課題を把握し、施策に反映していくという役割も持っています。
主なご意見
  • 岐阜市女性センターを男女共同参画の拠点として条例の中で位置づけてほしい。
  • 今、私たちは各地方自治体の男女共同参画に関する条例をインターネットなどで見ることができる。条例の中に拠点施設の条項がないと、「岐阜市には拠点施設がないんだな」という判断をしてしまう。女性センターを拠点施設として明記してほしい。

(苦情相談等)

第18条 市は、性別に基づく差別、男女共同参画の推進を阻害する要因、ドメスティック・バイオレンス等の人権の侵害等に関する苦情及び相談を受け付け、関係機関等との連携を図りつつ、適切な措置を講ずるものとする。

説明
男女共同参画を進めるためには、市民が抱えるさまざまな問題に適切に対応する体制を整備しなければなりません。
市は市民生活に関する苦情や相談を市民相談室で受け付けており、ドメスティック・バイオレンスに関する専門員による相談は、児童家庭課の女性相談で受け付けています。また、特に男女共同参画に関する苦情、女性が抱えるさまざまな問題に関する相談は、第17条に記載している女性センターでも受け付けています。
これらの相談には、必要に応じて関係機関と連携をとりながら、対応していきます。
主なご意見
  • 市は「関係機関等との連携を図り、適切に対応し、その結果を申し出たものに対して通知しなければならない」としてほしい。(事務局:「その結果を申し出たものに対して通知する」ということは、「適切な対応」に含まれるものと考えます。)
  • 苦情相談は、人権の侵害に関するものだけに限らないこと。また、例えば、市の施設以外の事業所などで差別的取扱いを受けたときも、市に申し出ることができるようにしてほしい。
  • 条例に関する問題の苦情を処理する第三者機関を設置することを盛り込んでほしい。(事務局:市の外部からの委員による男女共同参画推進審議会に、苦情処理を担当する部会を設けることも、今後検討していきたいと考えています。)

(年次報告の公表)

第19条 市長は、男女共同参画の推進状況及び男女共同参画の推進に関する施策の実施状況を明らかにする年次報告書を作成し、これを公表するものとする。

説明
男女共同参画を着実に進めていくために、毎年実施状況を調査し、公表して、それに対するご意見等を次年度の施策に反映していく必要があります。
現在、男女共同参画室では、岐阜市女性行動計画の進捗状況を年毎に調査し、取りまとめて、岐阜市男女共同参画推進協議会で公表し、審議をしていただいています。基本計画策定後は、その進捗状況を、条例設置となる岐阜市男女共同参画推進審議会にはかっていきます。

第3章 男女共同参画推進審議会

第20条 男女共同参画の推進に関する基本的かつ総合的な施策及び重要事項を調査、評価及び審議するため、岐阜市男女共同参画推進審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、次に掲げる事項について、市長の諮問に応じ調査、審議及び答申するものとする。
(1) 基本計画の策定及び変更に関すること。

(2) 前号に掲げるもののほか、男女共同参画に関する施策の基本的事項及び重要事項
3 審議会は、前項に定めるもののほか、男女共同参画に関する施策の基本的事項及び重要事項について市長に意見を述べることができる。
4 審議会は、委員15人以内で組織する。この場合において、男女いずれか一方の委員の数は、委員の総数の10分の4未満であってはならない。
5 委員は、次に掲げる者のうちから市長が委嘱する。この場合において、委員の一部は、公募により選出するものとする。
(1) 学識経験者

(2) 市民
(3) 企業及び団体関係者
(4) 関係行政機関の職員
(5) 前各号に掲げるもののほか、市長が適当と認める者
6 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
7 委員は、再任されることができる。
8 前各項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。

説明
1 男女共同参画に関する施策の策定、実施に市民が参画し、公正で透明な施策の推進をはかるために、審議会は大きな役割を担います。
現在、市の男女共同参画行政の現況と課題を検討するための機関として、岐阜市男女共同参画推進協議会が設置されています。条例により、岐阜市男女共同参画推進審議会が設置され、調査、評価、審議にあたることになります。
3 審議会は、市長の諮問に応じて調査、審議、答申をするだけでなく、それ以外の男女共同参画に関する施策の基本的な事柄、重要な事柄について、自主的に市長に意見を述べることができます。
4 審議会の委員数は男女どちらかに大きく偏らないように決められなければなりません。
5 委員の一部は必ず公募によって決められることになります。公募の対象は「市民」を想定していますが、必要に応じて「学識経験者」を公募することも考えられます。
主なご意見
  • 男女共同参画の推進状況を評価する機関としてはどうか。
  • 具体的な公募の人数を書き入れてほしい。(事務局:市では、高度に専門的な事項について審議を行うものなど一部の審議会等をのぞいては、公募による委員選考を積極的に進めています。市の定めた「審議会等の委員の公募に関する要領」の中で、「公募委員の委員定数に占める割合は、2割以上を目標とし、男女の比率が同数になるように努めるものとする。」と規定しています。男女共同参画推進審議会においても、市の方針に従って公募を行います。)
  • 公募の対象は「市民の一部」のように明確にすべきではないか。(事務局:「市民」以外の公募の可能性も考えられるため、柔軟性のある表現としました。)

第4章 雑則

(委任)

第21条 この条例に定めるもののほか、必要な事項は、市長が定める。

附則

(施行期日)

1 この条例は、公布の日から施行する。

(経過措置)

2 第10条第1項に規定する基本計画が策定されるまでの間は、市長が決定した岐阜市女性行動計画を同項の規定により策定された基本計画とみなす。

(非常勤の特別職職員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部改正)

3 非常勤の特別職職員の報酬及び費用弁償に関する条例(昭和59年岐阜市条例第11号)の一部を次のように改正する。

別表国土利用計画審議会委員の項の次に次のように加える。

男女共同参画推進審議会委員:日額 9,500円

(検討)

4 市は、この条例の規定について、施行後三年を目途として、施行状況等を勘案し、検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

説明
男女共同参画推進に関する課題は多く、それらの課題への取組が進む中、セクシュアル・ハラスメント、ドメスティック・バイオレンスなど新たな課題が洗い出されるという状況が続いています。こうした社会の動きに対応して、本条例も見直していくことが必要です。
主なご意見
昨年10月に施行されたDV防止法では、3年を目途として検討を加えるということを入れている。この条例も作ったら作りっぱなしではなく、見直しをしていってほしい。

(その他のご意見)

  • 市民にとってわかりやすい条例であることが重要である。
  • 女子大生にとって就職しやすい社会や、女性に不利のない社会にできるような条例を作ってほしい。
  • 学校は「聖域」でだれも手がつけられない場になっている。条例ならば、学校の壁に風穴をあけ、少しは社会の風を吹き込めるかもしれない。性別役割分業の思い込みを変えようとしない教員のために、研修の場を、条例に入れてほしい。
  • 母性の保護について、自営業や農村で働く女性の権利、地位の向上について、女性の生涯にわたる性と生殖に関する健康と権利(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)について、盛り込んでほしい。
  • 東京の大学から岐阜市に帰ったものの、息苦しく逃げ出したい気持ちで暮らしていた。条例制定を知り、岐阜市も捨てたものではないと元気が出てきた。妹が条例によって岐阜の町が変わりつつあるのなら、就職先を岐阜に考えてもいいと言っていた。
  • 女性の人権を大切にした条例を。
  • 実効性のある条例を。
  • 僕は就職が決まったが、大学の同じ研究室の女子には、エントリーシートさえこない社があり、世の中がどこか間違っていると思っていた。こういう条例があちこちでできると就職差別はなくなるのではないか。
  • 条例によって女も男のように自由に働けるようになるとうれしい。
  • 一般の人々の意識変革のむずかしさを強く感じているので、条例制定の必要性を痛感する。
  • 岐阜市は政令市を目指しているのなら、女性の地位も向上させるべきで、条例制定はいいことだと思う。
  • 岐阜市はまだまだ男女共同参画から目をそむける人たちが多いようだ。もっと市民に知ってもらい、考えてもらわなければいけない。
  • 条例が、女性、ひいては男性が人間らしく生きるための足がかりになることを期待する。
  • 県下で初めての条例となるので、よいものをつくってほしい。
  • 男性優位のシステムでは、現在のさまざまな問題は乗り越えられない。条例がそのシステムに風穴をあけ、新たな市の活力が生まれるだろうと期待している。

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