#3 医療・介護・福祉事業を営むグループ 理事長 山田豪さん 「地域包括ケアシステムの構築で、みんなが安心して暮らせる地域共生社会の実現を目指す」(2022年3月掲載)

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ページ番号1015789  更新日 令和4年3月30日

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第3回は、岐阜市をはじめとする県内の地域で、医療・介護・福祉サービスを提供するグループの理事長・山田豪さんです。

インタビュー内容

山田さん

ー貴グループの紹介をお願いします。

山田さん 1925年に創業し、1966年に医療法人化、1998年には社会福祉法人を設立し、グループとして医療、介護、障がい者支援、子育て支援を4本柱とするサービスを提供しています。職員総数は1,650人程です。

ーコロナ禍でエッセンシャルワーカーの重要性が改めて認識されるようになりました。医療・介護などに取り組まれる方は多くいらっしゃると思いますが、貴グループの取組はどこに特色があるのでしょうか。

山田さん 祖業が病院を中心とした医療ですが、地域包括ケアシステムや医療・介護の連携、地域医療にいち早く取り組んだところに特徴があります。また、医療、介護だけでなく、障がいや子育て事業、その他の福祉事業など、いわゆる地域共生社会に関わる事業を幅広く行っていること、或いは、病院だけだった時代から、本業のゴール3「すべての人に健康と福祉を」だけでなく、ゴール11「住み続けられるまちづくりを」など、SDGsにつながる様々な取組をしていたことも特徴です。

ー厚生労働省は、「団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現していく」と述べています。しかし、実現には様々な課題があると云われていますね。

山田さん 例えば、患者さんやご利用者を中心として、関わる様々な職種の連携、いわゆる「多職種連携」が重要と云われています。しかし、同じ病院内のチーム医療ですら簡単ではなかったように、地域において、医療職と介護職、異なる事業所や法人間でうまく連携することは簡単ではありません。

 また、昔のように入院した病院に治るまでいるというわけではなく、何かの理由で、入院した後にリハビリや在宅復帰の調整のために別の病院に転院し、(1)その後自宅や施設に戻る、(2)元の住まいには戻れず別の退院先を探す、或いは(3)途中で悪くなって元の病院に戻るというようなことも普通です。この時に次の施設、スタッフに情報や方針がきちんと引き継がれていることが重要です。

 また、「自分らしい暮らしを人生の最後まで…」を実現するためには、必ずしも正解が1つではありません。医療や介護の専門的な判断だけでなく、ご本人の思いや価値観も重要であり、それを汲み取り、共有する必要があります。その他にもサービスや制度が一般の方にとって分かりにくいことや、同じサービスでも事業所や人によって質のばらつきが大きいことも課題です。

 とはいえ、地域包括ケアシステムの構築の取組は最近始まったことではありませんし、質の向上を促すような制度の変更なども行われており、徐々に改善していると思います。

 地域包括ケアシステムの構築は地域間競争だと云われたこともありました。私たちは岐阜の地域包括ケアシステムがよいものになるように、グループ内の事業所の質や連携力を向上させ、更に地域に広がるような取組を進めています。

在宅医療の様子

ーコロナ禍の中で、デジタルトランスフォーメーションの必要性が云われ、医療の分野ではオンライン診療の存在が認識されるようになりました。ICT(情報通信機器)についてどうお考えですか。

山田さん 基本的にICT化は進めて行くべきだと考えています。オンライン診療については、コロナ禍で注目されるようになりましたが、制度の問題や、ご高齢の患者さんが多いことなどから、岐阜では思ったほど普及していない印象です。私たちの医療機関でも2年前に体制を整えましたが、実績としては、まだそれほど多くはありません。ただ、今後は増えていくのではないでしょうか。

 オンライン診療以外では、医療、介護に限らず様々な記録や情報共有について電子化を進めていますし、病院や介護老人保健施設からの退院・退所時のカンファレンスを、いち早く対面とオンラインにハイブリッド化しました。

 また、グループ内のほとんどの会議は2年前からオンラインで行っています。初めは皆不慣れで色々問題もありましたが、機材やルールを整備し、当たり前になりました。以前は会議の度に多くの職員が移動していたのですが、それが無くなっただけでも随分省エネになりました。

 その他にも、ヒヤリハット事例などのレポート、コロナ情報の共有、研修関連など、この2年間でICT化したものはたくさんあります。

ー貴グループのSDGsの取組について教えてください。

山田さん 2019年にグループとしてSDGsに取り組む方針を決め、2020年1月にプロジェクトを発足しました。25人のプロジェクトメンバーが分科会に分かれ検討を重ね、3月にSDGsコミットメント及び5本の柱から成るSDGs方針を発表しました。「医療・介護・福祉事業」「環境・資源対策」「健康経営」「人材育成」「地域貢献」です。取組の規模は大小それぞれですが、これらに様々な部署が取り組んでいます。

 本業の「医療・介護・福祉事業」では、まさに地域包括ケアシステムの構築がメインテーマですし、障がいや子育て、福祉事業の拡充などにも取り組んでいます。そもそもこれらの事業自体がSDGsそのものではないかという声もありますが、あえてSDGsに位置付け、SDGsを意識して取り組んでいます。

ー今後のSDGsの取組でやっていきたいことはありますか。

山田さん 新たにということであれば、環境分野の取組を進めたいですね。医療・福祉の分野では、環境への取組は必ずしも優先度が高くありませんでした。一方で、多くのエネルギーを使いますし、感染予防等の観点からも使い捨てが多いです。

 2021年にグループの事業所の一部を100%再生可能エネルギーに変えましたが、基本的に私達だけで解決できる問題ではありませんので、業界としての取組が必要になってくるでしょう

高校出前授業の様子

ー子ども向けにSDGsを普及啓発する「SDGsこどもミーティング」を開催されていますね。

山田さん はい、小学生向けのイベントとして2020年から始めました。コロナ禍で急遽オンライン開催に切り替えましたが、そのおかげで県外からの参加もあり、関心の高さに驚きました。

 プログラムの中には、岐阜市立長良西小学校や岐阜大学教育学部附属小中学校など、岐阜市内で積極的にSDGsに取り組んでいる学校の児童・生徒さんに発表をしてもらうコーナーがあるのですが、それを聴いた他の子どもたちが、「同年代の子どもたちがやっているのはすごく刺激になる」と感想を述べてくれました。私も聞いていて、親世代よりも子ども達の方がよく知っているのではないかと思いました。

 また、中学校や高校の授業に呼んでいただくこともありました。SDGsの普及・促進で一番効果が出るのは子どもたちの世代だと思いますので、続けていきたいと思っています。

ー地域活動に関してはいかがですか。

山田さん コロナ前までは長年に渡り地域の皆さんと共にお祭りなど、様々な地域行事をやってきましたが、2022年もまだ難しそうですね。古いものですと、1995年頃から続けているものもありますので再開したいと思っていますが、アフターコロナにおいて大規模イベントが今までと同じ形でできるのか、やるべきなのかは地域の皆さんと検討していきたいと思っています。

 一方で、地域のサロンなどは感染状況を見ながら開催したり、戸別訪問のような形で行ったりしています。必要なことはできる範囲で行っていきたいと思っています。また、コロナ禍で生活に困る方が増えており、緊急食糧支援も始めました。

ーSDGsの取組の成果や反響を実感されましたか。

山田さん 私たちは、2020年にSDGsのコミットメントを発表するなど、医療や福祉の業界の中で比較的早くからSDGsに取り組んできました。特にSDGsに関するオリジナル冊子を発行しましたので、新たに取り組もうとする法人から購入希望や問い合わせが多くありました。この2年間は取材や講演依頼も多かったと思います。

 また、SDGsの取組を通して今まで接点のなかった会社などとの出会いもありました。地域共生社会、まちづくりは、私たちだけでできることではありません。SDGsを共通言語として生まれる、業界を超えたパートナーシップにも期待したいですね。

 もちろんいくつか成果は出ていますが、まだまだこれからだと思っています。2021年に「清流の国ぎふ」SDGs推進ネットワークのリーディング会員にも認定されましたので、より一層、数値目標やアウトカムを意識して取り組んでいきたいと思っています。

SDGsのゴールアイコンを持つ山田さんと職員の方々

ー今後、SDGsに取り組んでみようと思われた方に、参考となるアドバイスなどはありますか。

山田さん 会社や団体であれば、誰か中心になる人は必要だと思います。その上で多くの社員を巻き込むことでしょうか。

 また、それぞれの会社の事業や取組をSDGsのフレームを通して整理することはどこの会社にとっても有益だと思います。

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