#2 養蜂業等を営む企業 代表取締役社長 中村浩康さん 「養蜂を通じて自然と命の営みを支えていきたい」(2022年3月掲載)

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ページ番号1015665  更新日 令和4年3月3日

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第2回は、岐阜市に本店を置き、養蜂業等を営む企業の代表取締役社長・中村浩康さんです。

インタビュー内容

中村さん

ー御社の紹介をお願いします。

中村さん 養蜂全般、蜂産品の製造・販売 (はちみつ、ローヤルゼリー、プロポリス等)、養蜂資材の製造・販売、食品・飲料の製造などを営んでいます。創業は1804年。材木商からスタートしました。養蜂との関わりは明治時代に遡ります。海外から日本にセイヨウミツバチを使った近代養蜂が入って来て、弊社で材木を使用した養蜂資材を作り始めました。その後、養蜂や蜂産品製造を手がけるようになり、現在に至ります。

ー蜂産品からSDGsのゴール3「健康」との結びつきを想像することはできますが、養蜂そのものとSDGsはどう結びつくのですか。

中村さん 私たちが食べる野菜や果物の多くはミツバチによって賄われています。国連環境計画(UNEP)によると、世界の食糧の9割を賄う作物100種のうち70種以上の受粉をミツバチが媒介しているそうです。ミツバチというと、蜂蜜をイメージされる方が多いのではないかと思いますが、実は花粉媒介という大事な役割も担っていて、ポリネーターと呼ばれています。

 弊社は、養蜂業を営む中で、ミツバチが花粉交配によって植物を生み出していること-農家の作物の花粉交配のほか、見えないところで、ミツバチが植物を生み出し、それを草食動物が食べ、さらに肉食動物が食べて生命がつながっている、そうした生態系の循環に貢献していること-は理解していました。その意味で、養蜂は環境、食、貧困改善に資する事業でもありますね。SDGsを知って自社とどう関連するかを考えた時に、やはり養蜂だと思い、企業養蜂などの取組により推進していこうと考えたのです。

養蜂場の様子

ー私たちの生活はミツバチ、養蜂によって支えられているのですね。ところで、養蜂業の現状はどうなっているのですか。

中村さん 日本の養蜂は、個人や夫婦など少人数で営まれる方が多く、企業が営むものは少ないですね。NPO法人の例などもありますが、いずれにしても事業者のバリエーションが少ないし、メジャーな業種ではありません。ですから、企業養蜂の取組を始めたのです。

 実は、日本の蜂蜜のほとんどが輸入もので、国内の自給率は6%しかありません。この30年間で比較しても、生産量・自給率ともに減少しています。

 しかし、養蜂は人間の営みの中でずっと昔から続いてきたものです。人間とミツバチのお付き合いは8000年以上も昔に遡ると言われていますし、紀元前6000年頃、スペインのラ・アラーニャ洞窟に描かれた壁画には、はちみつを採集する人の姿が描かれています。日本の養蜂は、日本書記によると、643年に、現在の韓国から「太子余豊が蜜蜂の房す四枚をもって三輪山に放ち養うしかれどもうまわらず」と失敗に終わったようですが、これが起源だそうです。昔から、そして現代も無くてはならない必要なもの。私たちは、そうした価値を見出しているが故に、養蜂をSDGsと結び付けていきたいと思うのです。

ーミツバチを守り、養蜂を続けることが重要だと理解できました。その取組の一環として行っている企業養蜂について教えてください。

中村さん 予てより、趣味で養蜂に取り組まれる方から、新しく養蜂をやりたい、或いはやってみたが上手くいかないという相談を幾つか受けました。一人で養蜂をやろうと思ってもなかなか難しいです。そこで、弊社が何かサポートできたらいいな、という思いを持っていました。そこにSDGsが登場して、弊社は、養蜂に取り組む人を増やすことがミツバチを増やし、緑を増やすことにつながると思い、何かできないかと考えました。

 個人の場合、田舎在住でないと難しいので、対象者は限定されてしまいますが、企業であれば、土地も人も有しています。環境先進国と言われるヨーロッパでは、自動車メーカーをはじめとして企業の環境意識が高い。一見畑違いの、高級車を生産する大手自動車メーカーが養蜂を行っています。養蜂は、勿論環境のためになるし、採った蜂蜜を社員食堂で提供するなど社員との交流も目的としているそうです。日本企業にもこうした取組を先行してやっているところがあります。そうした企業は感度が高く、世界のトレンドをしっかり見ているなと感じます。

 こうした動きの中で、弊社は、そうした取組を日本でも広めていきたいと思うようになりました。企業が養蜂に取り組むことによって、養蜂のもつ意味や価値をより広く世間に知らしめることができます。そうして企業や一般の皆さんから取組に共感を得られればありがたいです。弊社が企業養蜂を本格的に始めたのは2021年からですが、社会活動としてどんどん伝播していければと思っています。

ミツバチ

ー企業養蜂の普及がミツバチ、養蜂を増やし、SDGsの達成に貢献するということですね。

中村さん そのとおりです。農作物や植物は実をつけないと次につながっていきませんが、ミツバチが花粉媒介を行うことで、実をつけることができ、持続可能となります。受粉は自然におけるマストの営みだということです。

 企業養蜂の目的は、単に蜂蜜を採ることでなく、只今申し上げたポリネーション、環境を守ることです。養蜂家は蜂蜜が目的でよいのですが、企業養蜂はそうではないということです。この企業養蜂の目的に多くの方に共感していただき、参加していただきたいなと思います。企業の皆さんに、企業養蜂の本来の価値やメリットを見出していただき、SDGs推進の取組のツールにしていただきたいですね。例えば、社員教育、社員の環境学習、社員同士の輪を作るものでもいいと思います。それに加えて、副産物として蜂蜜も楽しんでいただければ。

 弊社の強みは、養蜂のノウハウを教えられること、その器具を扱っていることです。それらを提供することで「みどりの源」であるミツバチを広め、SDGs達成に貢献していきたいです。

ー企業養蜂の意義がわかりました。では、実際に養蜂に取り組まれる企業の多くは、やはり「SDGsの観点から」でしょうか。

中村さん そうですね。以前は単に蜂蜜を採りたいというところが多かったですが、最近は、弊社から、緑を増やしSDGsにつながるという観点を説明すると、共感していただけるケースが増えているなと感じています。業種も自動車の部品メーカーから医療法人まで、全国の様々な企業・団体さんからお問い合わせをいただいています。

ー企業養蜂に関する御社の具体的な取組について教えてください。

中村さん 企業の担当者さんにお越しいただき、弊社から養蜂の手順を説明します。春と秋には合宿での研修を行っています。養蜂を行うには、都道府県への申請が必要ですし、何より植物が生えた場所の選定が必要ですから、そうした支援も行っています。器具の販売と更新も重要なサポートです。研修では基本をお教えするだけで、後は始めてから何かあれば都度相談していただきます。企業養蜂は自然を扱うものですから、経験をある程度積み重ねることが必要です。マニュアル通りにはいかないことも多いです。ですから、わからないことを弊社にお問い合わせていただき、プロである弊社がきちんと対応する仕組みとしています。

ー企業養蜂以外にも進めているSDGsの取組があればご紹介ください。

中村さん 弊社の製造工場のロス削減に取り組んでいます。原材料や生産量のロスを数値目標を掲げて減らすように努めています。また、岐阜市内の会社で製造された機械を用いて、石油でなくプラスチックごみを原料とするボイラーに切替を始めようとしています。

ー本日はありがとうございました。養蜂が単なる蜂蜜の採取に留まらない、私たちの命や生活に深い関わりを持つ営みであるということがよく理解できました。最後に、御社の取組に関して、岐阜市民の方が一緒に参加できそうなものがあれば教えてください。

中村さん 今はコロナ禍で実施は難しいですが、将来、地域の学校の子どもたちに、養蜂現場を見ていただく「学びの場」をつくりたいです。また、弊社の施設ではありませんが、岐阜市畜産センター公園の敷地内にある「みつばちの家」は、養蜂を学べる子ども向けの施設ですから、ぜひ活用していただければと思います。

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