#1 岐阜市立長良西小学校 教諭 原田先生・後藤先生 「西っ子はSDGsの学びを通して、ふるさとの未来を考えています」、PTA役員の皆さん 「親子でSDGsを学び、実際の行動につなげています」(2022年3月掲載)

ツイッターでツイート
フェイスブックでシェア
ラインでシェア

ページ番号1015666  更新日 令和4年3月3日

印刷大きな文字で印刷

第1回は、岐阜市立長良西小学校です。教諭の原田和樹先生と後藤翔大先生、またPTA役員の皆さんにお話を伺いました。

インタビュー内容

(原田先生と後藤先生へのインタビュー)

ー長良西小学校では、いつ頃から授業にSDGsを取り入れたのですか。また、そのきっかけは何だったのでしょうか。

後藤先生 2018年度からですね。学校の教育目標は「未来にはばたく 西っ子」ですが、当時の校長と教諭が、この目指す子どもの姿とSDGsが近いなと感じて授業に取り入れるようになりました。

原田さん

ー具体的に授業でどのようにして学んでいるのですか。

原田先生 まず、SDGsのゲームですね。2021年度はコロナ禍のため実施を見送っていますが、3年生の「総合的な学習の時間」にカルタ・双六でSDGsを学びます。双六は、サイコロを振ってSDGsのゴールのマスに止まるものです。こうしたゲームを通じて少しずつSDGsの学習ができます。まずはSDGsを知ってもらうことが大事です。

ー子どもたちの反応はどうですか。

後藤先生 最初の頃は「へぇ、こんなものがあるんだ」という反応でしたが、最近ではテレビなどでSDGsを目にすることもあって、当たり前のものになりつつあるようです。1年生の授業で、子どもたちから「それってSDGsだよ」と声があがることもあります。「Sustainable Development Goals」「持続可能な開発目標」という正式名称を既に知っている子どももいて、段々と浸透してきたな、と感じますね。

ー他にはどんな学びをしているのですか。

原田先生 3年生から6年生まで「総合的な学習の時間」という教科がありまして、その中で段階的に学んでいくこととしています。

 3年生は、まずSDGsを知るところから始めます。4年生は、具体的な中身を学びます。例えば、目標3に関してどんな問題があるよということですね。5年生は、市内の金華山や長良川について学習する中で、自分たちの身の回りにもSDGsがあることに気づいてもらいます。6年生は、自分たちがこれまでやってきたことがSDGsの目標とどうつながるのか、自分たちは今後どうやって関わっていけばよいのかを考えつつ、自分たちのふるさとの未来に目を向けて「長良西小校区が将来こうなるといいな」というのを出口としています。

ー自分が住む地域の持続可能性を出口にするというのはすごく良い視点ですね。その総合的な学習の時間におけるSDGsの学習方法として、様々な内容が考えられますが、長良西小学校の工夫を教えてください。

原田先生 地域の特色を幾つかのテーマに分けて、自分が興味を持ったテーマについて学習を進められるようにすること、それから、クラス横断的にグループごとに学ぶことですね。

ー子どもたちが、授業以外の場面でSDGsの学びを活かしていると感じることはありますか。

後藤先生 ごみ削減への意識が高くなっていますね。クラスで子どもたちが雑紙などの回収を積極的に行っているし、夏休みの自由研究でSDGsに取り組む子もかなり増えました。SDGsの目標ごとに、LEDの使用、絶滅危惧種の保存など多種多様なテーマで取り組んでいます。

授業の様子

ーまさしく現代の課題そのものですね。学校として、SDGsの目標の中で特に注力しているものはありますか。

原田先生 環境は、子どもたちが親しみやすい分野ですね。それから、6年生の「総合的な学習の時間」に、自分ごとに置き換えやすい地域の3つの課題「環境」「防災」「福祉」をテーマとして設定し、それらをSDGsの目標と結び付けて学んでいます。

 例えば、ある子どもが、目標14「海の豊かさを守ろう」に係る課題を解決したいと思っているとして、その子が考えた改善策・解決策が、14以外の他の目標の課題解決につながっていることに気づいてもらいます。SDGsの特長は、ある人が一番注力する目標がAだと仮定して、A以外の目標同士のつながりがあるところだと理解しています。ですから、1つの目標に固執するのではなく、あの目標はどうか、この目標はどうかと視野を広げられる授業をしています。児童は、自分がまず解決したい課題を選び、そこから派生する課題や解決策を考え、つなぎ合わせる「ウェビングマップ」も作成しています。さらに、他の目標を選んだ子どもと交流をして、あれとこれもつながるかな、と話しながら、相互につなぎ合わせていくこともしています。

 岐阜市企画部の職員さんに授業で講話してもらった際、職員さんが紹介した市の取組例は、真ん中に目標3があり、様々な目標と関わり合っていましたが、子どもたちの中には、同じく目標3を真ん中に置きつつも、市の職員さんと異なる目標につないだ子もいました。1つの目標には色々なつながりがある、答えが1つではないことを学んでいますね。

ーお話を伺って、学校は私たちが子どもであった時代から大きく変わりつつある、と感じました。学校として、SDGsの学びを通して子どもたちに理解してほしいことは何ですか。

原田先生 ある解決策があるよ、というのは1つの案に過ぎませんし、それが何の達成につながるかは、人によって見方が異なります。様々な見方があるということですね。子どもたちには、1つの事柄を多角的に見る力をつけてほしい。

 企業も、様々なSDGsの取組を進めています。例えば、授業で、ある市販カップ麺が容器にバイオマスカップを用いていることを紹介しましたが、子どもたちには、SDGsの学びをそうした社会の動きに興味を持つきっかけにしてほしいな、とも思います。

ー今後、学校としてやりたいことを教えてください。

後藤先生 今後は、6年生だけでなく、どの学年においても、「総合的な学習の時間」における地域の学びが、実際にSDGsとつながっていることを実感してもらえる、そうした役割を私たち教師が果たしていきたいと思っています。

 また、「総合的な学習の時間」だけでなく、各教科もSDGsと深く関わっています。例えば、家庭科であれば食品ロスの問題、理科であればエネルギー問題、社会科だと海洋ごみの問題などですね。今後は、各教科の学びにおいてもSDGsをつなげていきたいですね。

ー長良西小学校では特色ある海洋ごみの学習をやっていて、これまで様々な媒体で紹介されています。最近の取組状況について教えてください。

後藤先生 社会科の授業で、長良川から海に流れ出たごみが流れ着く三重県答志島の子どもたちが通う学校とオンラインで交流し、海と川のつながり、河川ごみを減らすことの大切さを学びました。

天神川の調査の様子

ー机上の学びだけでなく、学校外に出て、フィールドワークも行っているそうですね。

原田先生 「総合的な学習の時間」に、6年生の環境コースの子どもが、地域の「天神川を守る会」の方と一緒に、実際に天神川に入って生物調査をしています。福祉コースでは、社会福祉協議会の方に来ていただいて体験学習をしたり、校区内のメモリアルセンターに行って福祉的な取組を見つける学びをしていますし、防災コースでは、炊き出し訓練を行っています。それぞれのコースで地域の方を講師として招いて、体験活動を行っているところです。

ー冒頭で、学校の教育目標と関連すると仰いましたが、SDGsを学ぶことでそれを浸透させやすくなりましたか。

後藤先生 そうですね。それはSDGsによって学ぶ目的を明確にできるからだと思います。SDGsを学ぶことが、今の社会、将来の社会に必ずつながるんだと感じることができますね。SDGsそのものが学びの価値になり、それを実感できる1つの目的になります。ともすれば漠然となりがちな学びを、このように活用できると感じられる、わかりやすい指標ですね。

ー今後、SDGsの学びをどうしていこうとお考えですか。

原田先生 SDGsは既に浸透してきましたので、これまでとおり漫然とカルタや双六をやっているだけでは時代遅れになると考えています。教員が、子どもたちのSDGsへの理解をしっかりと受け留め、それに沿った学びを準備していきたいですね。

(PTA役員の皆さんへのインタビュー)

SDGs新聞

ーPTAでもSDGsに取り組んでいらっしゃると伺いました。ぜひお話を聴かせてください。

PTA役員さん PTAでは、毎年取組のテーマを決めています。2020年度までのテーマは食育に関するものが続いていました。学校の授業でSDGsに取り組み始めたことを受けて、PTAもそれに呼応するということで、2021年度のテーマをSDGsにしました。具体的には、SDGs新聞の作成と配布、使用済みカイロを回収する取組を行っています。

 SDGs新聞は、SDGsを家庭でも知っていただきたいという想いで作成し始めたものです。夏休み・冬休み前に作成して、全児童に配布しました。

 夏休み前に配布した新聞では、SDGsとは何かをわかりやすく説明するとともに、SDGsに関する書籍の紹介をしました。また、子どもたちが取り組めるSDGsビンゴも掲載しました。SDGsに関するビンゴ形式のクイズに楽しみながら答える中で、何がSDGsのどの目標につながるかを学べる内容となっています。自分たちが考えたことを自由に書き込める欄も設けました。

 さらに、冬休み前に配布した新聞では、使用済みのカイロを回収する取組を紹介しました。子どもたちは学校でSDGsを学んでいますが、保護者も一緒に学び・知ることを最初の一歩にしたいと思っています。

カイロ回収ボックス

ー使用済みのカイロが再利用できるのですね。「使い捨て」ですから、多くはそのまま普通ごみとして廃棄されているのが現状かと思いますが。

PTA役員さん 学校内にボックスを設置して、家庭で使い終わったカイロを回収し、リサイクルするものです。カイロの中に入っている二価鉄イオンは、ヘドロに反応して水質を浄化する効用があります。その反応を利用して水質を浄化する製品を製造する大阪の企業に寄付しています。

 こうした取組によって、SDGsの目標にあるように、ごみを減らすとともに、水質向上につなげることができます。

 この発端は、PTAの中で、「夏休み中、SDGs新聞で学ぶことはできた。それに留まらず、目に見える形で実際の行動につなげてはどうか。」という意見が出て、そこからアイデアを持ち寄り、取組を始めることにしたものです。

 まずは季節柄よく使用するカイロを、冬休みが終わってから回収を始めました。多くの子ども・家庭が楽しく参加してくれているようで、思った以上に多くの量を回収できています。1週間で40キログラムもの使用済みカイロが集まりました。集まったものをPTA協力のもと、毎日交代で回収しています。

 この他にも、使わなくなったクレヨンを回収し、マーブルクレヨンを作る取組も行う予定です。

クレヨン回収ボックス

ー「カイロの回収はどうか」と話が出て、そこからすぐ実行に移せたところが素晴らしいですね。マーブルクレヨンの取組も紹介していただけますか。

PTA役員さん 短くなり、或いは折れて使わなくなったクレヨンを捨てずに回収して、大垣の事業者さんに送ります。事業者さんがそれらを集めて加工し、マーブルクレヨンに再生します。そうして出来上がったものを小学校1年生に贈呈します。

 幼稚園で使ったクレヨンは、小学校に上がった後は、新しいものに替えられ、 小学校で使ったものも中学生になると使わなくなります。たまたまネットニュースでマーブルクレヨンの取組を観まして、使用済のクレヨンを捨てずに使う方法はよいなと考えたものです。この取組は、カイロ回収の後、3月から行う予定です。

ーSDGsというと難しそうな感じがしますが、実は身の周りに取組のタネがあるのですね。PTAでSDGs推進に取り組み、変化を感じましたか。

PTA役員さん まだ学校でSDGsを学んでいない低学年の子どもたちも、SDGsを口にするようになりましたね。

 PTAとしては、子どもたちが学校でSDGsを学ぶだけでなく、保護者にも、子どもと一緒に学び、知ってほしいという想いを持っています。

 SDGs新聞のビンゴに子どもが取り組むには保護者の方の協力も必要でした。新聞の保護者コメントに「家族で一緒に勉強できた」「地球を大切にしていきたい」といった声が寄せられたことを感慨深く受け止めました。

 今後は、学校の授業とリンクして取組を進められるといいなと思っていますし、何よりSDGsには、子どもたちに、学校で思いやりをもって友達に接して仲良くしようということも含まれています。そうした考え方を様々な世代にも広げていけたらいいなと思っています。

PDFファイルをご覧いただくには、「Adobe(R) Reader(R)」が必要です。お持ちでない方はアドビシステムズ社のサイト(新しいウィンドウ)からダウンロード(無料)してください。

より良いホームページにするために、ページのご感想をお聞かせください。

このページの情報は役に立ちましたか?

このページに関するお問い合わせ

未来創造研究室
〒500-8701 岐阜市司町40番地1 市庁舎9階
電話番号:058-214-2004 ファクス番号:058-264-1719

未来創造研究室へのお問い合わせは専用フォームをご利用ください。