調査で明らかになった大仏殿及び大仏の価値

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ページ番号1023290  更新日 令和6年2月7日

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 正法寺(しょうぼうじ)の大仏殿と大仏は19世紀前葉に建立され、約200年が経過していますが、経年劣化に加え、地震や台風などの災害による被害により、破損箇所が目立つようになっており、保存修理が必要な時期にきています。
 しかし、これまで正法寺の詳細な文化財調査が行われたことはなく、大仏殿の正確な建築年代や改造過程もはっきりとしたことが分からなかったため、平成26年度より実測調査や古文書調査などの各種調査を実施し、大仏殿及び大仏の文化財としての価値を明らかにしました。そして、令和4年度にこれまでの調査結果と今後の保存整備方針についてまとめた「金鳳山正法寺大仏殿及び大仏整備基本計画」を作成しました。
 

正法寺大仏殿及び大仏の価値

大仏正面の写真
大仏正面

(1)大仏を安置するための巨大な空間を持つ大仏殿【大仏殿の価値】

 像高10mを超える大仏を安置するには、巨大な空間が必要です。大仏殿は、巨大仏像を安置するという類例のない目的で内部空間と構造が設計された、極めて珍しい建造物です。

(2)大仏殿に五百羅漢像を配し、羅漢堂の機能も持つ【大仏殿の価値】

 羅漢(らかん)とは、仏道を修行して迷いの世界を脱し、煩悩を断ち切った境地を得た人のことを言います。江戸時代には五百羅漢信仰が盛んになり、全国各地で五百羅漢像が作られました。正法寺の五百羅漢像も、大仏と並行して作られたと考えられています。なお、現在檀上にある108躯(く)の像は、明治12年(1879)から同14年にかけて修理新調されたもので、大仏殿・大仏の大規模修理事業の一環として行われたことが分かっています。

(3)大仏と大仏殿が一体の構造を成し、他に類を見ない独自性を持つ【大仏殿と大仏の価値】

 粘土の上に紙や漆箔を貼り重ねて作られた大仏を風雨から守るためには、大規模な覆屋(おおいや)が必要で、大仏殿は大仏と並行して建てられました。大仏の像内に立つ「真木(しんぼく)」と呼ばれる太い柱は、大仏殿の小屋組(こやぐみ)を直接支持しているため、構造的に一体のものとしてみることができ、他に例がない大変ユニークな建造物です。

(4)大仏殿内部を巡り、より近くから大仏を参拝する近世から近代の見世物的な要素を持つ【大仏殿と大仏の価値】

 江戸時代後期(18世紀半ば~19世紀半ば)、関東や東北で、さざえ堂と呼ばれる、仏堂の内部を巡らせて参拝させる建造物が登場し、庶民の注目を集めました。大仏殿も、殿内を「巡る」巡拝経路を取入れ、階段(斜路)の昇降を通じて、観相台(かんそうだい)から大仏の正面を参拝することを可能にしました。こうした仕掛けを導入したことにより、庶民の参拝をうながし、正法寺大仏殿が人気を博していく要因になりました。

(5)大仏を建立した岐阜町の力量を表す【大仏殿と大仏の価値】

 巨大木造建築である大仏殿と大仏が完成した背景には、岐阜町が長良川を利用した材木流通の拠点であったことがあげられます。過去の大規模な修理や増改築も、岐阜町を中心とする地域の人々によって支えられ、今日の姿を保ってきました。

(6)近世に流行した巨大仏の要素を受け継ぐ、日本最大の塑像(そぞう)【大仏の価値】

 第11代惟中(いちゅう)和尚が大仏建立を計画した頃は、江戸で合羽大仏(かっぱだいぶつ)と呼ばれる、見世物興行としての造り物が流行していました。合羽大仏は、岐阜大仏に作り方が似ており、大木を真木として、周囲を竹で籠(かご)を編むように概形を作り、その上に桐油紙(とうゆがみ)=合羽を貼り重ねて制作します。岐阜大仏を作る際には、この合羽大仏の技法を参考にしたのではないかと推測されています。
 ※塑像とは、粘土などの柔らかい素材を用いて造形する技法により作られた像のことを言います。

(7)絵図や鳥観図に描かれる岐阜町における象徴的な建造物【景観に関する価値】

 現在正法寺が建っている場所は、かつて斎藤道三や織田信長が城下町として整備した場所でした。織田信長の山麓居館や金華山上の岐阜城天守閣は、江戸時代には失われていますが、その後に建立された正法寺大仏殿は、それらに代わる、岐阜町の中でも頭ひとつ飛び出た高層建築であったと考えられます。
 

正法寺大仏殿・大仏について詳しく知るには

 今後、調査で明らかになったことを詳しくご紹介します。内容は、順次更新していく予定です。
 

正法寺を見学するには

 金鳳山正法寺ホームページをご覧ください。

大仏殿内の巨大空間の写真
大仏殿内の巨大空間
五百羅漢像の写真
五百羅漢像
大仏胎内の真木(上を見上げる)の写真
大仏胎内の真木(上を見上げる)
大仏殿内の参拝用斜路と観相台の写真
大仏殿内の参拝用斜路と観相台

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