令和元年度第一回生物多様性シンポジウムを開催しました

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ページ番号1003005  更新日 令和3年8月31日

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去る8月4日(日曜日)、みんなの森 ぎふメディアコスモスで、令和元年度第一回生物多様性シンポジウムを開催しました。

本シンポジウムは、生物多様性の保全などについて市民の皆さんと一緒に考えるイベントとして開催しています。今回は、「みんなで学ぼう岐阜の自然」と題し、身近な生き物について子どもから大人まで分かりやすく、3人の先生方に方に講演して頂きました。

開催概要

開催日時
令和元年8月4日(日曜日)14時~16時30分
開場
みんなの森 ぎふメディアコスモス かんがえるスタジオ
内容
  • 講演1「減る鳥 増える鳥」
    日本野鳥の会岐阜 代表 大塚之稔氏
  • 講演2「岐阜の魅力ある植物」
    岐阜県博物館 自然係 可児美紀氏
  • 講演3「希少動物を守る動物園の真の役割」
    岐阜大学応用生物科学部准教授 楠田哲士氏
  • トークセッション 大塚之稔氏、可児美紀氏、楠田哲士氏

講演

講演1「減る鳥 増える鳥」 日本野鳥の会岐阜 代表 大塚之稔氏

県鳥のライチョウが、地球温暖化による植生の変化などで減少しているとのお話や、ブッポウソウ等減っている鳥に対しては、対策を行っているが岐阜県でも生息域が減っており、個体数が少なくなる前の対策が重要であるとのお話をして頂きました。また、反対にオオバンやカワウなど増加傾向にある鳥もおり、魚を食べすぎたり、他の種を脅かしている弊害が出ているとの、お話も聞きました。

参加者からは、「鳥が増えるのも減るのも人間の仕業であることに考えさせられました」などの意見を頂きました。

写真:大塚氏講演

講演2「岐阜の魅力ある植物」 岐阜県博物館 自然係 可児美紀氏

岐阜県は、山や川がある自然豊かな県であるが、そこには緑(植物)が広がっており、見ているようで見ていない植物について、名前に着目してお話をして頂きました。

例えば「シロツメクサ」の名前の由来。「白い爪をもつ草?」と思ってしまいますが、名前の由来は江戸時代、ヨーロッパから陶器やガラス製品を船で運ぶとき、箱の底に白い花が詰まった様子から名付けられたそうです。他にも、マムシグサ、カタクリなど、色々な植物についてお話を聞きました。

参加者からは、「植物の名前の由来について、面白かったです」などの意見を頂きました。

写真:可児氏講演

講演3「希少動物を守る動物園の真の役割」 岐阜大学応用生物科学部准教授 楠田哲士氏

動物園は、レクリエーションとして動物を展示しているだけではなく、環境教育として楽しく学んだり、動物を絶滅させないために種の保存を行ったり、動物のことを調べる研究などを行っているとのお話をして頂きました。楠田講師の研究室では、動物のフンからホルモン数値を読み取る研究を行い、計画的な飼育・繁殖をおこなっているとの事で、東山動物園のゾウやゴリラなどは、この研究が役に立ったとのお話を聞きました。

参加者からは、「生物多様性に関して、動物園の果たす役割が分かりました」などの意見を頂きました。

写真:楠田氏講演

トークセッション

トークセッションにおいては、3人の先生方に、シンポジウムを通して伝えたいメッセージをお話して頂きました。「自然を守るとは」を考えて人間が能動的にできることをやって欲しい、正しい知識を持って欲しい、安易な行動をしないようにして欲しい等のメッセージを頂きました。また、先生方から先生への質問や、会場の方から頂いた質問にも答えて頂きました。

参加者からは、「正しい知識が重要。身近な自然に関心を持つことが第一歩」などの意見を頂きました。

写真:トークセッション
トークセッションの様子

会場の皆さんからは沢山の意見を頂きましたが、全ての質問に答えることができなかったため、こちらで紹介させて頂きます。

質問

開発や建設などによって数を減らした生き物はたくさんいるかと思います。特にこの生きものは開発や建設によって数を減らしたなぁ、という生きものがいたら教えてください。

回答 大塚先生

チュウヒという猛禽類が減少しました。チュウヒは河口近くの湿地帯に生息しますが、そうした環境は、開発の対象になりやすいのが原因です。現在、国内で25~30ペアくらいしかいない希少種ですが、チュウヒの生息地がオリンピック会場の候補地になっていることも危惧しています。

ヤンバルクイナも減少しましたが、これは開発が原因ではなく、ハブ対策で海外から持ち込んだマングースが、ヤンバルクイナを捕食していることが主な原因です。また、ヤンバルに捨てられたネコが野生化し、ヤンバルクイナを捕食しているという報告もあります。マングースもノネコも人間の行為によるものです。安易な行動には気を付けたいですね。

質問

学校でヒダサンショウウオを調査しています。貴重な生き物を守るために、気を付けることは何ですか?どうしたら増やすことができますか?

回答 楠田先生

小型サンショウウオは、鳥や哺乳類のように大きく移動することができず、その場で生きていくしかありません。なので、今の生息地を守っていくことが最も大事です。

また、移動できない生物ということは、それぞれの地域独自の遺伝子を持っています。例えば、西日本に広く生息しているカスミサンショウウオは、遺伝子の研究が進んで地域ごとの個性の違いが明らかになり、地域ごとの違いどころか種のレベルで違うことが報告されました。カスミサンショウウオは、今年になって9種に再分類され、岐阜の個体群(岐阜市では条例指定種)は、ヤマトサンショウウオと呼ばれるようになりました。

あなたの調査しているヒダサンショウウオはその地域にしかない個性を持っています。その地域の個性を守ることも大事です。

質問

外来植物とはどのように付き合えばいいのでしょうか?

回答 可児先生

天敵も競争相手もいない外国の生物が持ち込まれると、一気に増加するケースがあるので注意が必要です。外来植物としてよく知られているオオキンケイギクは、鑑賞用の園芸植物として持ち込まれ、それらが野生化して日本の在来植物種を脅かしています。

オオキンケイギクの駆除が各地で行われていますが、一回きりのイベントでは翌年には元どおりです。外来植物を減らすには、除去活動を地域で継続するなど、地道な取り組みを続けることが大事です。

質問

生物多様性とは何か?改めて考える時期に来ていると思います。数の少ない種のみが貴重になってしまうことが疑問です。

回答 大塚先生、楠田先生

生物多様性について改めて考えることに同感です。

私たちは、すべての種について個別に対策することは不可能なので、まずは希少種をシンボルとして保全対策に取りかかっています。また、希少種だけを見ているのではなく、希少種を取り巻く“環境”を守りたいと考えています。例えば、生態系ピラミッドの頂点にいる猛禽類を保全するには、その生態系全体を保全しなければ成功せず、また高山帯のライチョウを保全することは、その下流域全体の自然を保全することを意味しています。

質問

将来大学などの研究者になるためにはどうすればいいですか?大学の選び方、学生の時に何をしていたか、などを教えてください。

回答 大塚先生、楠田先生、可児先生

まず、自分がやりたい研究の分野やテーマについて考え、それに関わる大学や研究者、研究室について調べてみてはいかがでしょう。また、大学から大学院への進学の際に、研究テーマを選択することもできます。

(大塚先生)
私は高校生の時に、鳥の勉強ができる大学を探して進学しました。学生時代から50年近くライチョウの調査を続けていますが、調査を続ければ続ける程、フィールドが大事だと思うようになりました。

(楠田先生)
私は、小さい頃から好きだった動物のことを勉強するために大学を選び、大学生時代から好きな動物園のことを続けていたら、今の自分になっていました。好きなことをやっているうちに色々なものが見えてきましたし、また別の新たな興味も生まれてきます。ライチョウはそういう中で出会った生き物でした。大学の研究のことを詳しく知りたい場合は、興味のある大学の先生に直接連絡したり、学校の先生から連絡してもらって、見学させてもらえるところも多くあります。多くの大学は、夏休みなどにオープンキャンパスという高校生向けのイベントを行っていて、大学を紹介しています。高校生向けですが、小中学生も含め家族で参加されることもあります。岐阜大学応用生物科学部では毎年8月に開催しているので、ぜひ参加してみてください。

(可児先生)
研究をしていた大学時代は、野外でサンプルを集め、それを使って実験をしていました。実験は2時間おきに測定があり1日半続きました。その間家に帰ることも、寝ることもほとんどできませんでした。夢中になっていたからか、それが苦ではなかったです。

質問

御岳山噴火の影響はどの程度ライチョウに出ているのでしょうか?

回答 大塚先生

調査の結果、火山灰が積もらなかった場所は、影響はありませんでした。火山灰が降り積もった立ち入り禁止区域は調査できなかったため、影響はわかりません。降り積もった火山灰は植生(ハイマツ)やライチョウに影響を及ぼすかもしれません。

質問

カワウが大量繁殖しているのにスライドに「保護区」と書いてありました。カワウを保護しているのですか?

回答 大塚先生

スライドの「保護区」とは「鳥獣保護区」のことであり、鳥獣保護区が安全な場所であるため、カワウが集まってきたのです。

今は害鳥とされるカワウですが、高度成長期の頃は、水質汚染や農薬などの影響により、エサとなる魚類が激減し、絶滅の危機に瀕していました。現在は、河や海の水質が改善され、魚類などが増えたため、カワウも増加しました。

質問

動物園の入場料は500円くらいですが、つぶれずに残っているということは、国から補助金があるのですか?

回答 楠田先生

ライチョウやツシマヤマネコの保護増殖事業は、環境省から動物園に委託されているため、わずかながら国からの補助がありますが、それ以外の大多数の動物に対しては国からの補助は基本的にはありません。

地方自治体の動物園は住民サービスの一環として運営しており、有名な東山動物園は名古屋市の施設です。民間の動物園だと2,000~3,000円の入園料も普通ですが、公営動物園の入園料500円との差額は、その動物園を運営している市(市民)や県(県民)の税金で賄われています。つまり、公営動物園には行けば行くほど得だということです。何度も行って、動物のことや環境のことをたくさん学んでください。絶滅危惧種を守ることは、まずその動物を知ることからです!多くの人が動物園へ行くことで、動物園が潤い、それが絶滅危惧種の保全にもつながるのです。

当日、参加者の方々には、アンケートをご記入していただきました。今後のシンポジウムの内容について大変参考になるご意見を多数いただきました。アンケートにご協力いただき、ありがとうございました。

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