市長の「元気」宅配便 No.331~

市長の「元気」宅配便 No.331~

(331)『ポピュリズム』の功罪

 昨年は米国大統領選挙をめぐって「ポピュリズム」論争が盛んな一年でした。さて、そのポピュリズムとは?日本語に訳せば「大衆迎合主義」となり、ややネガティブ(否定的)な響きがあるこの言葉ですが、語源はラテン語のポプルスPOPULUS(人々、人民)で、大衆への迎合を意味する「衆愚政治」という否定的な意味と、大衆の反逆、「人民主義」という肯定的な意味の両方があるようです。ポピュリズムは「大衆の支持を基盤に一部の特権階級やエリートの特権を正そうとする政治運動だが、一方で人気取りに始終して衆愚政治に陥る危険もある」というような記載をしている辞書もあります。つまりこのポピュリズムという「手法」はその目的とするところ、すなわち「志」次第で、良くも悪くもなるということでしょうか。
 ポピュリズム政党やポピュリズムを唱える政治家は、往々にしてメディアを縦横無尽(じゅうおうむじん)に駆使(くし)する傾向があります。米国のトランプ大統領がツイッターを活用し、自分の思いのたけを大いに発信していることは周知の事実です。しかし、インターネットやSNSの普及によりフェイクニュース(偽ニュース)や個人的な極論などが容易に人々の目に触れるようになると、人々の主張や考え方が極端な方向に振れていく危険性をはらみます。十分な検証をせず、つい自分に好都合な意見や立場に吸い寄せられていくのが人情というものでしょう。
 人間というのは、つい「今」の「自分」にとって都合の良いことを選択しがちではないでしょうか。「今」だけではなく「将来のこと」、「自分」のことだけではなく「他人」をも含む「全体のこと」を考えることが重要です。私は常日頃から「現在益だけではなく未来益を」「部分益だけではなく全体益を」考えて市政経営にあたるよう職員の皆さんにお願いしています。将来のために今は我慢をしよう、全体のために自分は我慢しようという姿勢が社会全体に満ち満ちてくれば世の中は順回転していきます。
 先日、ある新聞に「シルバー民主主義」についての記事が掲載されていました。国の財政を悪化させているのは、投票率が高く政治への影響力が大きい高齢者を優遇するための政策を導入しているからではないかという問題提起の一方で、きちっと説明さえすれば高齢者もある程度の負担増を受け入れられるのではないかという最近の研究の結果も載せられていました。ともするとポピュリズムとも受け取られかねない政策への警鐘とともに、一方で十分な説明や情報さえあれば国民の良識でポピュリズムを乗り越えていけるのだと確信できるうれしい記事でした。

(広報ぎふ29年9月15日号掲載)

(332)人生100年時代の覚悟

 日本では平均寿命が年々長くなり、2015年現在、女性86.99歳、男性80.75歳と世界でも屈指の長寿社会となっています。その結果、2015年の日本の高齢化率(65歳以上の高齢者の割合)は26%を超え、2060年には38%を超えると予測されています。つまり日本人の5人に2人が高齢者という時代が目の前に迫っているのです。また健康意識の高まり、食生活や生活環境の改善、医学や薬学の進歩などもあり、高齢者の身体機能や知的機能も劇的に若返っているようで、10~20年ほど前に比べ10歳程度若返っているという研究成果もあるようです。
 政府は先日「人生100年時代構想会議」を立ち上げました。19歳の学生起業家や82歳のゲームアプリ開発者を含む13人からなるこの有識者会議では、人生100年時代とも言われる超高齢社会における日本人の働き方、学び方などについて突っ込んだ議論がなされるようです。そのメンバーの中でとりわけ私が注目したのが、ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授です。彼女は最近「ライフ・シフト‐100年時代の人生戦略」という著作を発表、私も大変興味深く読ませてもらいました。この本では、従来人生というものは教育を受ける時代、仕事をする時代、引退後のんびりと休養しながら暮らす時代という3つのステージで考えられていたが、人生100年時代ではこの単純な3つのステージではなく、教育、仕事、休養などという各ステージを多様に組み合わせたマルチ・ステージの人生へシフト(ライフ・シフト)することが必要になると説きます。家族や友人、スキルや知識、健康などといった、お金以外の資産(無形資産)の重要性、余暇の時間を自分に対する投資に使うこと、夫婦の役割分担の見直しなど薀蓄(うんちく)に富んだ話が満載です。興味ある人はぜひ一度本書に目を通されることをお勧めします。
 人生100年時代を生き抜くためには生きがいづくり、居場所づくりも大切なテーマです。岐阜市では今年度「ぎふスーパーシニア」の皆さんに学びの場を提供するため長良川大学に「スーパーシニア学部」を新設、この学部のスーパーシニア教育学講座で学んでいただいた方にはコミュニティ・スクールで子どもたちにその知識や経験を伝授いただく場も用意しています。気が遠くなるような100年という人生を生き抜くために不可欠なものは「覚悟」「好奇心」「健康」「向上心」、中でも一番大切なのは「楽しむこと」「楽しいこと」ではないでしょうか。今から人生100年時代の生活設計を立て、有意義な人生を送ろうではありませんか。

(広報ぎふ29年10月1日号掲載)

(333)芸術、食欲、スポーツ、読書・・・満載、“岐阜の秋”到来

 日本人の感性の豊かさは、日本の四季の変化によるところが大きいのではないでしょうか。その四季のなかでも、厳しい冬の寒さに耐えた木々が芽生え、鳥がさえずり、動物たちの生命の鼓動が溢れる春とともに、厳しい夏の暑さの後に訪れる、天高く馬肥(こ)ゆる豊饒(ほうじょう)の秋は日本を代表する季節と言えるでしょう。地球温暖化が進む昨今、蒸し暑い夏のあとの秋の訪れが一段と待ち遠しいのは私だけではないでしょう。太平洋高気圧からの湿気もなくなり、いやが上にも私たちの食欲、知識欲、創作意欲を高めるさわやかな秋は、食欲の秋、読書の秋、芸術の秋など様々な形で表現されます。
 芸術の秋には全国各地でさまざまな美術展が催されます。岐阜市でも10月5日から11月23日までの約50日間、特別展「レオナルド×ミケランジェロ展」を岐阜市歴史博物館で開催しています。この展覧会は、今年一年を通じて行っている信長公の岐阜入城・岐阜命名450年記念特別協賛事業として企画されました。岐阜市の姉妹都市イタリア・フィレンツェ市からお借りしたレオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロ・ブオナローティ両巨匠の作品を中心に約70点が展示されており、初日の10月5日にはイタリアのセッジョレ劇団による「生涯のライバル レオナルドとミケランジェロ」という対話劇も上演されました。
 日本でもおなじみのこの二人の巨匠は23歳の年の差はあったものの、宿命のライバルとも言われ、お互いを強く意識し、刺激し合うことでイタリア・ルネサンスをより高みに導いてくれたのではないでしょうか。展示作品の中で特筆すべきは、最近になってミケランジェロの作品と判明し今回が日本初公開となる「十字架を持つキリスト」という2メートルを超す巨大な大理石像です。ミケランジェロが大理石を彫っていたところ、顔の部分に黒い筋(すじ)が現れたため途中で彫るのを止めたと言われており、長い間所在不明だったものが2000年にローマ郊外の修道院で見つかったのだそうです。
 10月にはフィレンツェ市の副市長一行もセッジョレ劇団とともに来岐されるなど、今、岐阜市は本場イタリア・ルネサンスの雰囲気に満たされています。この機会に、岐阜市の芸術の秋を大いに満喫しようではありませんか。

(広報ぎふ29年10月15日号掲載)

(334)ロボット全盛時代と『心』

 昭和30年代から40年代にかけて手塚治虫作の「鉄腕アトム」が初の国産テレビアニメとして一世を風靡(ふうび)しました。当時小学生だった私もそのSFマンガに大いに魅了された一人でした。当時のことですから、まさか人間の言葉を話し、空を飛ぶロボットの存在など夢のまた夢という世界でした。アトムは様々な能力を備えていたにもかかわらず、芸術や自然への感動や恐怖心などの複雑な感情を持てないことに悩んだ末に、お茶の水博士に人造心臓を取り付けてもらい人間と同じ感情を持つに至ります。しかし両親を救うための戦闘でせっかく手に入れた人としての感情である「恐怖心」が災いしたことからその人造心臓を破壊する云々というストーリーで、人間的感情に対する悩ましい葛藤(かっとう)が印象的でした。
 さて昨今は第4次産業革命の重要性が叫ばれ、IoT(家電や工場生産工程などモノがネットワークにつながり、相互に制御する仕組み)、人工知能(AI)、ロボット、ビッグデータなどを語らずして将来の産業像、国家像を描けない時代が到来したといっても過言ではありません。こんな中、政府は2020年度(平成32年度)から全国の小中学校でプログラミング教育を導入すると決めました。岐阜市では国に先駆け今年度から、市内全ての小中学校でプログラミング教育を導入しました。これからは人工知能に考えてもらい、ロボットに肉体労働をしてもらうことで、今まで人が従事してきた多くの仕事が人工知能やロボットに取って代わられようとしています。ほとんどの業務をロボットがこなす「変なホテル」という一風変わったホテルも登場し大いに好評を得ているようです。
 しかし人工知能やロボットが人間のすべての仕事に取って代わることができるわけではありません。人間ならではの心(感情・感性)を必要とする芸術や文化などの創作活動、人の身体や心の痛みへの理解が必要な看護や介護の分野など、人が活躍しなければいけない仕事は山ほど残っています。またこれらの人工知能やロボットには人が心(命)を吹き込む作業が必要です。それがプログラミングです。ロボットの動かし方、話し方を人間がプログラムしてあげることで初めてロボットは働き、考えるのです。
 最近「シンギュラリティ2045」と言われます。今から30年後の2045年には人類の知恵の総和(総合計)を人工知能のそれが上回る時代が到来するというのです。ロボットや人工知能はあくまでも人の能力を拡張させるものであるべきです。岐阜市民病院で最近導入した手術支援ロボット「ダヴィンチ」は医師の負担軽減と手術精度の向上に大いに役立っています。人が作ったロボットや人工知能が人の制御不能になることなど、SF(空想)映画の世界の話にとどまってほしいものです。

(広報ぎふ29年11月1日号掲載)

(335)更なる高みを目指して!岐阜の風流・ぎふ長良川鵜飼 閉幕

 去る10月15日、今年の長良川鵜飼も無事終了しました。昨年は、船頭さんの事故もあり波乱の幕開けとなりましたが、今年は事故もなく無事にシーズンを終えることができ大変うれしく思います。長良川鵜飼は一昨年、国の重要無形民俗文化財に指定されました。今年の2月には中国雲南省の大理市を訪問の上、日本と中国が共に手を携(たずさ)えてユネスコの世界無形文化遺産登録をめざすことを確認、更なる高みを目指していくことになりました。東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年までに訪日外国人観光客数を4千万人にしようと、政府は日本遺産の制度の創設をはじめ、地方の観光資源の発掘、発信のためのさまざまな施策を実施しています。1千300年の歴史を誇り、漆黒の闇の中で宮内庁式部職・鵜匠により繰り広げられる古典絵巻・長良川鵜飼は、多くの観光客によりSNSなどを通じて国内外に発信され、今後とも岐阜市を代表する観光資源であり続けることでしょう。
 織田信長公岐阜入城・岐阜命名450年の今年、鵜飼観覧船乗船客数は8年ぶりに11万人の大台に乗りました。娯楽が多様化する現代にあっても伝統文化に対する根強いファンがいることは大変に心強いことです。岐阜市では毎年、市内の小学校の5年生に鵜飼観覧の機会を提供することで、潜在的な鵜飼ファンを増やす努力をしています。今年も岐阜高校の英会話クラブ(ESS部)の皆さんがボランティアとして、外国人観光客に対して英語による鵜飼説明をしてくれました。このように岐阜市固有の地域資源である鵜飼を市民がこぞって盛り立てていくことは、本市が誇る伝統の継承だけではなく、本市の観光産業の振興にも大いに寄与してくれます。
 さて、このように本市にとってかけがえのない固有の地域資産であり歴史資源でもある鵜飼にも課題が無いわけではありません。全国的に押し寄せる少子化の波は農業や中小企業の担い手不足・後継者不足という深刻な問題を引きおこしていますが、一子相伝(いっしそうでん)で受け継がれてきた鵜飼もけっして例外ではありません。今後とも持続可能な長良川鵜飼にしていくため、後継者の在り方についても今から議論を深めていく必要があります。「事前の一策は事後の百策に勝る」です。

(広報ぎふ29年11月15日号掲載)

(336)300万人達成!教育立市ぎふの拠点「ぎふメディアコスモス」

 去る11月23日、「みんなの森 ぎふメディアコスモス(メディコス)」開館以来の総来館者数が300万人となりました。旧市立図書館の年間来館者数約15万人のペースでいけば20年かかる300万人を、開館からわずか2年4か月で達成できたことは当初の期待を大きく上回り、市民の皆さんの潜在的な需要がこんなにあったのだと改めて驚かされました。メディコスは知の拠点たる図書館を中心に、文化の拠点、絆の拠点から構成される複合施設で、市民の皆さんに大いにご利用いただくことで、今や教育立市ぎふを代表する施設にまで育てていただきました。将来ここに市役所新庁舎が完成の暁(あかつき)には、両施設の相乗効果で更に多くの皆さんにご利用いただけるものと確信しています。
 各施設の利用率は年々増加傾向にあります。特に「おどるスタジオ」や「あつまるスタジオ」の利用率はなんと100%になっています。開館から1年以内に文部科学大臣が3回も訪問された図書館は日本広しと言えどもメディコスだけでしょう。私は「岐阜市の珍百景」と勝手に名付けていますが、週末や祝日には9時の開館前ともなると老若男女入り混じった長蛇の行列を見ることができます。座席数が910 席と十分あるにもかかわらず、朝から図書館の前に行列ができる光景はまさに珍百景と言えるのではないでしょうか。
 メディコスが出来てから図書館利用者の年齢層も変わってきました。旧市立図書館では約30%だった40歳未満の利用者の割合が、メディコスでは約60%と倍増し、特に若い人たちに好評を博(はく)しています。またグローブと呼ばれる大きな布製の傘から差し込む自然の光や、地下水や太陽光を利用した省エネかつ人にやさしい室温、ほのかに漂(ただよ)うヒノキの香りは親環境、親人間的空間を提供してくれています。絵本を持って戯(たわむ)れる幼児のかすかな声が聞こえる中、試験の準備なのか必死で参考書と向き合う中高生などのヤング・アダルト、黙々と資料を調べる働き盛りのサラリーマン風の人など、老若男女を問わず知的刺激を楽しむ様はまさに教育立市ぎふの目指す姿そのものです。ぎふメディアコスモスのますますの隆盛を期待しています。

(広報ぎふ29年12月1日号掲載)

(337)回顧 2017年 “時代の変革”とともに

今年も一年が暮れようとしています。実感のない景気回復とも言われた年でしたが皆さんにとってはどんな一年でしたか。米国トランプ大統領の誕生で波乱含みの幕開けとなった今年も、仰々しく喧伝(けんでん)された割には結果の伴わない、何か“大山鳴動(たいざんめいどう)してネズミ一匹”感のある年だったと思うのは私だけでしょうか。家電、自動車、製鉄など、各方面で歴史ある大企業が次々に粉飾決算、製品検査データの偽装・改ざん、長時間労働問題などに揺れ動き、過去の権威が雪崩(なだれ)を打って崩れていった一年でもあったような気がします。
 従来型の産業から新たな産業へと世界的な産業構造の変革が起こった年でもありました。家畜に頼っていた労力を機械へと移行した第一次産業革命、電力などで大量生産を可能にした第二次産業革命、電子技術などによる生産の自動化、効率化が進展した第三次産業革命に続き、現在世界的に起こっている人工知能(AI)、IoT 、ビッグデータなどを駆使した産業構造への変革は第四次産業革命と呼ばれています。このような時代にあって我が国は早急に知識社会への転換をはかることが不可欠で、今後それを支える教育の重要性がますます叫ばれることでしょう。加えて社会的、経済的安定により世界の人々の関心は他国、他地域にも向けられるようになり、世界的大移動時代を迎えています。2020年東京オリンピック・パラリンピックを控え、我が国における旅行・観光産業の重要性もますます高まっていくことでしょう。
 また、人生100年時代における新たな生き方の構想の重要性が声高に叫ばれた年でもありました。私たちの周りにはお元気な高齢者の皆さん(本市ではぎふスーパーシニアと呼んでいます)が溢れ、新たな力の源泉と位置付けられています。
 このような時代背景を受け、本市では今年一年様々な事業に取り組んできました。小中学校における人型ロボットPepper(ペッパー)を活用したプログラミング教育の開始、知・絆・文化の拠点「みんなの森 ぎふメディアコスモス」来館者総数300万人の達成、レオナルド×ミケランジェロ展や信長公ギャラリーなど数多くの事業に彩られた「岐阜市信長公450プロジェクト」、岐阜公園三重塔修復整備事業などによる観光立市・岐阜の発信、新庁舎実施設計発表による災害への備え、連携中枢都市圏形成に向けた本市と3市3町との連携協約締結による広域水平連携体制の確立など枚挙にいとまがありません。今後とも未来にしっかりと照準を合わせて、事前の一策を念頭に市政を進めていきます。

(広報ぎふ29年12月15日号掲載)